第7章 依存共存【R18】《不死川実弥》
「はい、終わりです」
取り替えた包帯をくるくると巻きながら少女は言った。
布団の上に座り寛いだ様子の不死川は、ありがとさん、と礼の言葉を口にすると不死川の布団の横に広げていた医療道具を手際良く片付ける少女の姿を眺める。
「みさ」
白いブラウスに白いフレアスカート、ウエストマークに紫のリボンを身に付けたみさと呼ばれた少女は名前を呼ばれて動きを止める。
「なんです?」
「まだ怒ってんのかァ?」
表情を変えずに返事をするみさに、不死川は呆れたように溜息を漏らす。
「…あたりまえです。こんな、何日も生死をさ迷う様な怪我をして」
何日も前に不死川は大怪我をしてみさの働く蝶屋敷に運ばれたのだ。
一時は容態が宜しくなく蝶屋敷にそのまま入院となってみさが付ききりで看病をした。
今現在は大分傷の具合も良くなり、自宅療養中なのだが毎日消毒に来るように言われているにもかかわらず全く顔を見せない不死川の家に
みさは自分の勤務時間が終わった後に甲斐甲斐しく毎日消毒しに来ているのだ。
骨折した右腕は固定されて首から布を掛けて吊るしてあり、右腕が使えないとなると不便そうだ。
持参した救急箱に全ての道具を詰め込み蓋をした後でみさは不死川を睨み付けた。
「これは、任務を全うする上で仕方無い怪我だったと思うんだがなァ」
鬼から人間を守るのが仕事なのだ。
多少の傷は覚悟の上なはず。
「けど、不死川さんは無茶し過ぎです。後援が来る知らせがあったのに1人で突っ走ったと他の方に聞きました。」
バレてやがる…とばつの悪い顔をしがながら不死川は包帯を巻かれている右腕をさする。
「…どうも戦いの場になると血が騒いでつい、なァ」
「不死川さんは死に急いでるように見えます」
不死川を覗き込むみさの瞳は驚く程に澄んでいて不死川は思わず目を反らす。
「…死に急いでる、ねェ」
「不死川さんにもしもの事があったら悲しむ人がいること、忘れないで下さい…無茶はしないって約束ですよね」
相変わらず真剣な眼差しで見つめてくるこの少女は、無茶はしないでといつも言う。
不死川は天を仰いでふーと息を吐く。