第5章 この手を掴んだら、最後【R18】《不死川実弥》
色を帯びた彼の瞳に
この手を掴んだ事を怖じ気付いた時にはもう遅かった。
寝室に運び込まれ
布団の上にこの身を投げ込まれて、迫ってくる彼を押し退けて逃げようと試みたがびくともしない。
後ずさって後ろを向いた私の後ろから覆い被さってきた彼に、私の両腕は彼の片手でいとも簡単に拘束されてしまった。
うなじに彼の吐息がかかって背筋がゾクリと凍ったのが分かった。
「や!やだ……っ」
熱い舌先に首筋をべろりと舐め上げられて身体が強張った。
「…じゃあどんなつもりだったんだァ」
どんなつもりかと聞かれても
ただ、もう少し一緒に居たいと
少し離れ難いと思っただけなのに
「私は、もっとお話がしたかっただけなのに…」
「はァ…お話ねェ」
呆れたとばかりに溜め息をつかれて
その唇が耳に当たってピクリと身体が反応する。
「俺はもうそんなんじゃ足んねェんだよ…」
いつもより掠れた低い声が耳元で響いて
さっきの背筋が凍ったのとは少し違う、似たようなそれが身体を駆け抜けて今度はじんわりと脳内が痺れたのが分かった。
甘い感覚に戸惑って身を捩れば、熱い吐息を耳に掛けられて舌が耳を這い回った。
「…は、…不死川さ…」
耳への刺激に身体がピクピクと反応してしまう。
「…耳弱ェんだなァ」
「…あっ…」
耳を刺激する水音が響く度、くすぐったい様な、ぞくぞくする様な感覚に思わず出てしまった声に自分でびっくりしていたたまれなくなる。
「あー…片手だと何もできねェ…」
そう言って両手の解放をとかれたものの
先程の攻防で浴衣が乱れたのを良い事に、浴衣の後ろ襟を腰まで下げられて背中が露になる。
「…っ!」
当然、前も二つの膨らみが露になったが幸い後ろ向きだ。
なんとか前は見られるものかと布団のシーツに胸を押し付ければ、小さな抵抗に彼が笑ったのが解った。
「…分かってンだろ?
こっちはずっと我慢してたんだ
…もう逃がしてやらねェ」
後ろを向いたままの私の髪を彼の手が優しく撫でる。
「不死川、さん…私…初めてなんです、よ?」
「ンな事は、分かってるよ」
彼の唇が背中にちゅと音をたてながら所々に口付けを落として行く。
「もう待てねェよ…」
それは、許しを乞う様で
口付けられた其処から身体が甘く痺れて行くのが分かった。