第5章 この手を掴んだら、最後【R18】《不死川実弥》
藤の家門の家へ着くと静かな離れへ通された。
本家から続く渡り廊下を進むとそこには居間と左右に一つづつ寝室があるのが見えた。
「こちら、寝間着で御座います。」
女将が二人に浴衣を渡して居間のテーブルの上にお茶の用意をする。
「何かありましたら何なりとお申し付け下さいませ」
「あァ、じゃあ酒を貰う」
そう言った彼を見れば、その視線に気付いたのかこちらを見返してくる。
「お酒飲まれるんですか」
「…お前も飲むか?」
にやりと笑われて目を反らせば、頭をわしゃわしゃと撫でられた。
「もう!やめて下さいよ…」
そんなやり取りを見ていた女将にふふふと笑われて、頬が熱くなるのが分かった。
「仲が良くて微笑ましいですね」
これは、他人が見れば仲が良い光景に映るのだろうか?
気恥ずかしさにそれを止めさせようと腕を掴めば、フ…と笑ったのが分かった。
「妹みたいなもんだからなァ」
「あらあら、てっきり恋人同士かと思ったのですが」
微笑む女将は、お酒をお持ちしますと言ってその場を後にする。
掴んでいた腕を放して、ぐちゃぐちゃにされた髪を指ですきながら一つの寝室の前まで行く。
「不死川さん、私はこっちの部屋を使わせて貰いますね」
「何だ、一緒に寝ないのか?」
寝るわけないでしょ!!と言いたいのをぐっと堪えて彼を見れば、いたずらでもしている少年のような笑みを浮かべている。
「…寝ません」
音が響く程に勢い良く襖を締めた。