• テキストサイズ

鬼滅の刃◆短編【R18】

第5章 この手を掴んだら、最後【R18】《不死川実弥》






まるで水を得た魚の様に
彼は数体の鬼の首をいとも簡単に切り落とした。

地面に転がった首と力無く崩れ落ちた身体が
程なく灰に変わり
夜風に吹かれてサラサラと流れ出す。

「あ…」

鞘から刀を抜く暇も無かった。
柄を掴み刀を抜こうとした瞬間に現れた彼に鬼を全て倒されてしまった。
今日は私1人で任務の筈だったのに、何故彼がここにいるのだろう?

滴り落ちる血を払うように
刀をひと降りしたのち、彼はその刀を鞘に治めた。

彼の視線がこちらに向き、ゆっくりと歩を進める。
森の静かな夜は地面の草を踏む音さえ鮮明に響かせる。

「不死川さん…何で、此処に?」

「たまたま此処より遠い処での任務の帰り道だったんでなァ…ついでだ、ついで」

気が付けば彼は目の前に居て
私よりも背の高い彼の胸板が視界に映る。

彼の手が顔に伸ばされて思わず目を瞑れば
親指で頬を擦られた。

「ぁ…」

ぬるりとした感触に、視線を上げれば彼と目が合う。

「悪いなァ…血が飛んじまった」

「…いえ」

月明かりの下で薄紫色の瞳が光る。

口から出るんじゃないかと言うほど心臓がドクリと跳ねて思わず視線を反らせば、彼がくつくつと笑った。



彼と出会ったのはもう三年の事だけれど
私は昔から彼が苦手だ。

その射抜く様な目が怖くて目も合わせられない。

それを面白がっているのか何なのか、会うたびにちょっかいを掛けてくる。
そう、完全にからかわれているのだ。


いきなりバサリと羽音を立てて二人の前に姿を現した鎹鴉にみさはビクリと身体を震わせた。

「みさ!…ト、風柱?ガ何故此処二?
…マア良イ!!二人トモ!!藤ノ家門ノ家へ!!
休息!休息!!」

「きゅ、休息?」

「もう夜も遅い…そこでゆっくり休んで朝になったら帰って来いって事だろォな」

鎹鴉が空高く舞い上がり二人の上を旋回する。

「朝まで、ですか…」

なんて事ない、只休息を取るだけだ。
けれども彼も一緒になんて、どうしようもなく胸がざわつく。

「ほら、置いてくぞ」

「…はい」

彼の少し後ろに付いて歩き出す。
月の光に照らされた銀色の髪がさらさらと風になびいてキラキラと光る。
それがあまりにも綺麗で、彼の後ろを歩きながら
ただただ、彼の髪を眺めた。


/ 75ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp