第4章 送られオオカミ【R18】《義勇》
「さぁ富岡さん、おうちに着きましたよ」
あぁ、と頷いた富岡はポケットから鍵を取り出した。
カシャンと音を立てて富岡の指から滑り落ちて地面に落ちた鍵を みさは拾って玄関のドアを開ける。
「はい、富岡さん。」
入って入って!もう寝て下さい!とゆらゆらと揺れる身体を玄関に押し込む。
草履をバラバラの方向にぽいぽいと脱ぎ捨て玄関を上がった富岡は壁にゆっくりもたれかかって動きを止めた。
「…富岡さん?」
その様子を玄関の外から見ていたみさは心配になり思わず声を掛ける。
「…」
富岡の返事は無い。
「…大丈夫ですか?」
「…気持ち悪い…」
どうやら気持ち悪くてそこから動けないらしい。
みさは、あー…、と呟きどうしたものかと考える。
恋人でもない異性の家に、それも夜に入るなど何をされても文句を言えない。
仮に富岡義勇がどんなに酔ってべろべろで不能な状態であろうとも、だ。
「…仕方ないですね。寝室まで運びます。」
「…すまない」
再び腕を支えて彼の歩みを助けるように寄り添い寝室まで向かう。
綺麗に整えられたら布団に彼を寝かせるべく掛け布団を捲り彼を布団の上に座らせる。
「ここまでくれば大丈夫ですね!では私は帰りますね」
「桜田」
そそくさと帰ろうとすれば名前を呼ばれて、
ビクリとしてしまう。
「水、飲みたい」
持ってきますねと伝えて、台所を探す。
みさは顔が熱くなる。勝手に身構えてドキドキした自分が酷く恥ずかしい。
台所に入り辺りを見回せば、食器棚が目に入る。
食器棚からコップを一つ取り出すとコップに水を注いだ。
勝手に鳴り出した鼓動を静めて、寝室へ向かった。
寝室に入ると みさが布団に座らせたままの富岡が目に入る。
周りの床には隊服の羽織とジャケットが無造作に脱ぎ捨てられていた。
ワイシャツ姿の富岡は一番上まで留まったワイシャツのボタンを二番目まで外し、はぁ…と荒い息を吐いた。
布団にのすぐ横に座り水の入ったコップを差し出した。
「どうぞ」
「…すまない」
富岡が水を飲む度に動く喉仏をみさはぼんやりとな眺めた。口に含み切らなかった水が、顎を伝いはだけた胸元に流れる。
みさはそれに厭らしさを覚えて、ゾクリと腰が震えたのが分かった。