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鬼滅の刃◆短編【R18】

第3章 熱【R18】《伊之助》



うだるような暑さの中
胡蝶亭の裏庭をみさは歩く。

少し開けた場所に
彼は立っていた。

「伊之助!」

猪の被り物がこちらを向く。

「なんだ、みさか」

なんだとは何よ?とやや不服そうなみさは伊之助に何かを差し出す。

「また病室抜け出して…
お昼の薬持ってきたんだけど」

お昼ご飯を食べたと思ったら
姿を消した伊之助を探しに来たのだ。

「出された薬位飲んでよね!」

はやく飲んで!と伊之助の目の前に薬の錠剤と水の入ったヤカンをつき出す。
伊之助はめんどくせぇと呟いたが
渋々猪の被り物を取ると薬を口に投げ入れ
ヤカンの口から水を飲む。
喉が渇いていたらしく、
ごくごくと飲み干す。
ヤカンに残った水を頭の上からばしゃばしゃと掛けた。

伊之助の腕に巻かれた包帯が濡れたので
またアオイに怒られるよと言おうとしたのだが
こんなに暑い日だから、すぐ乾くかと思い何も言わないでいる。

水に濡れた紺色の髪から水が顎に伝い厚い胸板に滴り落ちる。
伊之助は気持ち良さそうに髪をかき上げた。

「ん。」

空のヤカンを差し出され、みさはヤカンを受け取る。

伊之助は再び猪の被り物を被ると
空手の形の様なものを取り出した。

みさは木に寄りかかり
伊之助を眺める。

風が木々を揺らすと光と葉が落とした影が揺れた。
汗ばんだうなじを通る風が心地良い。

ミーン…ミーン…

蝉が鳴いている。

伊之助が形を取る度に、
歳に似つかわしくない
男らしい筋肉質な身体がしなる。
滴り落ちる汗が飛び散る。




ミーン…ミーン…




身体が熱くなるのは

この熱さのせい?



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