第2章 夢を見ていたい。
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「…ん」
前後左右に揺られる激しい動きに、凛は目を覚ました。
「凛、起きたのか!大丈夫か?」
「俺が運んでやってるんだぜ!感謝しろよ!」
意識は起きているのだが、長い夢を見ていたようで状況が理解出来ていなかった。
「炭治郎、伊之助…私どうして…」
「山から下りる前にいきなり凛が倒れちゃったんだよ。覚えてないか?」
よくよく見てみると、伊之助に背負われている。
「うわわわぁ!ごめん伊之助、重いでしょ…もう大丈夫!下ろして!!」
伊之助は上半身裸。
そんな身体にくっついていると思うと、凛はなんだか恥ずかしくなってきてしまったのだ。
「うるせえ!黙って背負われとけよ!」
がっしりとした背中からは、温もりも感じた。
どうせ降ろしてもらえなのだろう。
凛は、その背中に顔をうずめてむぎゅ、と伊之助を抱きしめた。
その後は炭治郎に、伊之助と凛が出会いについて問われた。
「2人は昔から知り合いなのか?」
「全然違うよ~。最終選別の後、同じ任務になって…そこで初めて喋ったんだ。」
初めて伊之助を見た凛は、ただただ“なんだこいつは”としか思わなかった。
上半身裸で猪とか、もう野生動物かとまで思った。
「初めて見た時はこんなチビに何も出来ねぇだろと思ったぜ!アハハハハ!」
「ちびじゃないし!くそ猪!」
「あア?ちびだろ。まぁ割と強かった、俺よりは劣るだろうがな。」
伊之助の“割と”というとは精一杯の褒め言葉なのだろうと思う凛は、少し照れた様子を見せた。