第2章 夢を見ていたい。
「藤…」
「そうだ、さっき凛、藤の花の香袋で倒れたよな。藤の花苦手なのか?」
そう聞いた炭治郎の言葉を遮るように、鴉がいきなり叫び始めた。
「カァアーーッ!休息!休息!負傷ニツキ完治スルマデ休息セヨ!」
ありがと、と言ってやっと伊之助の背中から降ろしてもらう。
「こんの野郎!凛ちゃんを背中に乗せるなんてずるいぞ!」
善逸はわあわあと叫び散らして、“次は俺の背中貸すからね?”と凛の手を掴んでぶんぶんと振った。
「お食事で御座います…」
「お布団で御座います…」
「妖怪だよ炭治郎、あの婆さん妖怪だ。妖怪ばば…」
善逸が騒ぐのを、炭治郎がごちんと頭を叩いて静めた。
それにしても、異様に速い。
善逸が妖怪だというのも無理もない。
「4人ともあばらが折れているとはな…」
伊之助、炭治郎、善逸、凛の順に4、3、2、1、と。
絶対伊之助の蹴りのせいだ、と思った凛だが、謝ってくれたし可哀想なので言わないことにした。
「箸使えよ箸!!」
「そんなもん使ってたら食えねえだろ!」
凛も初めは驚いたがそんなのはもう今更感。
外で食べる時は一緒に居るのが少し恥ずかしいが。
「伊之助、きのこ食べれない…」
「んなもんも食えねえのか?」
皿に置いて渡そうとしたところを、凛の箸から直接食べる。
いわゆる、“あーん”したということだ。