第3章 嘘つき。
꒰ 凛side ꒱
「な、なんなの伊之助…」
十分離れたところで、私は1度足を止めた。
“こうやって貰えるの好き”
分からない。伊之助が分からない。
どういう気持ちでこんなことを言ったのか。
伊之助のことだし、きっと何も考えずに言ったのだろう。
心臓が飛び出そうな程になっているこっちの身にもなって欲しいものだ、と心の中で怒ってみせる。
…ん?
なんでこんなにもどきどきしているのだろう。
きっとあの美形の顔が近くにあったからからだろうな、と納得させることにした。
「凛!2人は…って、顔真っ赤だぞ?大丈夫か?」
「え、いやなんでもないよ!大丈夫!」
いつの間にか、炭治郎が目の前にいた。
顔に手を当てると、火が出ているのか、と言うくらい熱い。
伊之助が変なことを言うからだ。
「そうか?伊之助となんかあったんじゃ…」
「い、伊之助はこっちに来てないよ~!!そんなことより、この蜘蛛の巣…何?」
歩いていると、蜘蛛の巣が私達を邪魔してくる。
上手く避けないと、体にくっついてきて気持ちが悪いのだ。
「凛」
「ん?」
炭治郎は、いきなり足を止めて私の方を振り向いた。
「一緒に来てくれてありがとう。伊之助もどこか行っちゃって、俺は1人だ。山の中から禍々しい匂いに、少し体が竦んでたんだ。」
そうだ。
伊之助のせいで忘れかけていたが、この山からはすごく寂しい色が漂っていた。
あんな色を出してるのは誰なのだろう。
「実際ね、私も善逸の気持ち、分かる。だから善逸に声をかけずにはいられなかった。“生きて、また会おう”って、いつの間にか言ってたんだ。」
「凛はすごいな。凛のおかげで、善逸は励みになったと思う。ありがとう。」
そう言って、炭治郎は私の頭をぽんぽんと撫でた。
お兄ちゃん気質だなぁ、と改めて感じた。