第3章 嘘つき。
꒰ 伊之助side ꒱
訳の分からない感情が痺れるように身体中を巡った。
妙に、胸が詰まるような感触だ。
ババアの時に感じたほわほわ、それもある。
でも、それだけじゃない気がした。
なにかもっと、暖かくて大きいものに包まれているようで。
「伊之助は強いね。一緒に頑張ろ?ね?」
優しい言葉が、そよ風のように囁いた。
「おい凛」
「なぁに?」
「俺こうやって貰えるのすきだからまたやれ!」
なんかよく分からないが、こうやって凛にくっついてもらうと、とても穏やかな気持ちになるのだ。
分からない。なぜか。
今度、権八郎らに聞いておこう。
ところが凛は、我に返ったようにぱっと俺から離れ、驚いたように目を見開いた。
「いや、ちょ…や、やるわけないでしょ!ばか!伊之助のばーーか!」
「はァ!!?今なんて言った!俺様が馬鹿な訳ねえだろ!!」
凛の奴、絶対許さねえ。
凛はそのまま炭治郎が行った方向へ走って行ってしまった。
そう言えば、なんで凛があの弱味噌に抱きつくのがあんなに嫌だったのだろうか。
分からねえ。
凛のせいで、頭使いすぎた。