第3章 嘘つき。
「俺様に馬鹿って言ったこと許さねえからな!」
「仕方ないじゃん!あれは伊之助が悪い」
「俺は悪くねえ!!」
“猪突猛進!”と叫び声が聞こえ、伊之助が2人に追いついてきた、途端にこれだ。
よっぽど根に持っているのだろう。
「2人とも、あれ…」
ぎゃあぎゃあと騒ぎ合う2人も、炭治郎の指した方を見た。
人だ。隊士の服を着ているから、鬼殺隊なのだろう。
「応援にきました。階級・癸、竈門炭治郎です」
炭治郎がそう言うと、その鬼殺隊員は目を見開いた。
「癸………!?なんで柱じゃないんだ!癸なんて何人来ても…」
言葉が止まる。
はっと息を飲み、視線は凛の方へ向く。
「…柱か!柱なのか!?雰囲気が、違う…」
凛の肩が微かにびくっと震えた。
“強くなんてない”と否定しようと思ったが、今はそんな話をしている場合ではない。
「私は残念ながら柱ではないですよ。微力ながらお役に立てたら、と。とりあえず、今の状況を説明して貰えますか?」
―――――
「こいつらみんな馬鹿だぜ!隊員同士でやり合うのが御法度だって知らねえんだ。いいか凛、馬鹿って言うのはこういう奴らのことを言うんだぜ!」
伊之助は、“どうだ、分かったか”というように凛を自慢気な顔で見る。
「伊之助だって善逸いじめたくせに」
被り物をしていても明らかに伊之助の機嫌が悪くなったのが分かる。
攻撃してきた隊士をさっと避けると凛の方をキッと見た。
「なんでお前はあの弱味噌の肩ばっか持つんだ!毎回なんか分かんねえがイライラすんだよ!」
「まあまあ落ち着いて、伊之助。今はこの人たちをどうするか考えよう」
炭治郎が上手くまとめてくれたおかげで助かった。
伊之助は本当によく分からないなぁ、と凛が首を傾げたのは言うまでもない。