第3章 嘘つき。
꒰ 凛side ꒱
善逸を置いていくのは少しためらいがあったが、いつまでもあそこに座っている訳にはいかない。
善逸を信じよう。
それにしても、伊之助や炭治郎が見えない…
その時だ。
「凛!どこにいる!さっさと着いて来やがれ!」
前方から猪…じゃなくて伊之助が走ってくるのが見えた。
「伊之助、ごめんね遅くなった」
「遅ぇ、何やってたんだ」
「善逸を励まそうと思ってぎゅってしてあげてたけど…大丈夫かな、自信持てたかな」
正直、私がぎゅっと抱きしめてあげたところでそんなに変わるとは思わないが。
それでも、善逸は耳がいいらしいから、離れて言うよりもくっ付いて言った方が伝わると思ったのだ。
…伊之助から返事がない。
ん?と思い、下げていた顔を上げる。
「…何だ、それ。俺様はやってもらってねえぞ!」
ん??
なんでそんないかにも“不機嫌”って顔してるの?
「いや、自信に溢れてる伊之助に与える自信なんてないと思…」
「いいからやれ!…あんな弱味噌がやってもらったことを俺様が受けてないのが気に食わねえ」
最後にいくにつれ、声が小さくなっていく。
そして怒ったのか、なぜか顔を背ける。
つくづく訳の分からない人だ。
「伊之助は本当に不思議だね」
そうは言うものの、何故か断りきれない私も私だ。
“その猪、当たるから外して”と言うと無言で外し、こちらをじっと見る。
そのまま、抱きしめた。