第2章 夢を見ていたい。
꒰ 凛side ꒱
朝、6時半。
外からはきらきらと輝く朝の光が差し込んでいる。
まだ身体は夢の中にいるようだったが、その光を受けるうちにだんだんと現実に引き戻されていった。
なぜか、伊之助の指を掴んでしまっていた。
その指をそっと離し、みんなが起きないように洗面所へ向かう。
夢を、見ていたと思う。
あたたかくて、懐かしい夢。
そう、昔の夢だ。
顔を洗うと同時にぱしゃ、と音をたてて水が落ちる。
“水の呼吸 拾壱ノ型…凪”
久しぶりに、見たいなと思った。
私は、あの技が好きだった。
音もたてない、静かな技。
それなのに、いつの間にか全て斬れている。
かっこよかった。憧れた。
義勇さんの鬼に向かう姿が、当時幼かった私でもとても好きだった。
顔を洗い、髪をといて身支度を終えた。
台所へ行っておばあさんに、
「お菓子を作りたいんだけど、いいですか?」
と聞くと、快く頷いてくれた。
そういえば、私が甘いもの好きになったのは蜜璃ちゃんの影響だったなぁ。
よく蜜璃ちゃんの家へ行き、甘いものを作って貰った覚えがある。
“凛ちゃん、これは金平糖よ。きっと甘くて美味しいわ”
初めて食べた金平糖は、口中が痺れるように甘美な味だった。
「柱のみんなに、会いたいなぁ…」
そう呟いた後、生地を回す手を1度休め、金平糖を1粒口に放った。