第2章 夢を見ていたい。
꒰ 伊之助side ꒱
ぱちっと目が覚めた。
目覚めのいい朝だ、なんて考えると、何か昨夜とは違う違和感を感じる。
狭い。
ちらっと隣を見ると、何故か凛の顔が。
そして俺の指をぎゅっと掴んでいる。
「…なんでお前こんなとこにいんだ」
話しかけたいのか独り言を言っているのか分からないまま、思ったことがそのまま口から出る。
「おい、起きろ」
そう言って揺らすも、“ん〜”なんて無防備な声が聞こえるばかりだ。
すやすやと寝ている凛の顔を何気なく見つめる。
頬にはふわっと赤みがさしていて、無意識に掴まれていない方の手が伸びる。
指で突けば、指の跡がつきそうなほどに柔らかい。
ほわほわ、とした感情がどこからともなく湧き上がる。
頬の次は髪でもいじるか、と再び手を伸ばすと共に、寝返りをうった凛から声が溢れた。
「…ぎゆうさん……すき…」
ぱっと手を引っこめる。
“ぎゆうさん”とは誰だ??
俺の知らない人の名前に戸惑いを覚える。
本当は今すぐ起こして聞きたい所を、まだ炭治郎も善逸も寝ている事だし、とぐっと堪える。
それでも何だかむしゃくしゃして落ち着かず、そのまま勢いよくもう一度布団に潜った。
こんな変な気分になったのは初めてだ。
少し、俺の指を握る凛の力が強くなった気がした。