第2章 夢を見ていたい。
「伊之助、箸が使えないからと言って凛ちゃんとイチャイチャすることは許さない。」
急に立ち上がった善逸が、ふるふると怒りに震えている。
凛にはなぜ怒っているのか全く分からず、首を傾げた。
「はアァ?お前が使えるんだったら俺だって使えるに決まってんだろ!」
伊之助はいつもの性格が出て、意地をむき出しにして箸を掴んだ。
掴み方…まずそこから違う…。
「いいか伊之助。人差し指はここで、そうだ。で中指は…」
炭治郎が指1本1本を丁寧に教えてあげている。
長男はすごい。さすが、面倒見がいい。
「いいか!俺だってあーんされたいんだよ!」
「ほら善逸にもしてあげるから、おいで?」
その途端、怒りに燃えていた善逸の顔が一気に変わって凛の方を見た。
嬉しくてたまらない、というように目がキラキラと輝いている。
そんなに嬉しいか、食べさせてあげるだけなのに。
「え!ええええぇぇぇ!凛ちゃん超好き!もう天使!」
凛は天ぷらを1つ掴み、善逸の口へと運ぶ。
また善逸も、大きく口を開けて凛に近づく。
がぶっ。
「何すんだよ伊之助ぇ!!それ俺が凛ちゃんにあーんして貰うやつだったんだぞ!」
箸の行く先は、善逸の口…ではなく、伊之助の口へと変わったのだ。
「凛の箸から貰っていいのは俺だけだぜ!お前みてえな弱味噌と一緒にすんな!ハハハハハ!」
凛は鈍感な少女であった。
そして伊之助もまた無意識に言っているのであった。
炭治郎と善逸だけが、“ああ、これが独占欲なのか”と微かに感じていた。
「伊之助、お腹が空いているなら自分のを食べたらいいじゃない。」
ああ、だめだこいつら。
そう思った2人のことなんて、凛も伊之助も感じていなかった。