第8章 愛情にも種類がある
私と銀さんはもうすっかり暗くなった道を歩き平河隊長のお墓へと向かった
『…や、やっぱり夜のお墓ってちょっと怖いね』
「当たりめーだろ。どこの世界にこんな夜遅くに墓参りに行く奴がいんだよ」
そう言ってキョロキョロと周りを警戒する銀さん
そういえば、怖いものとか苦手なんだっけ。
『夜のお墓なんて怖いのに…無理矢理付き合わせちゃってごめんね銀さん』
「ば、べ、別に怖くなんかねーよ!!もしかしたら墓の後ろから不審者が出て来るかもしれねェだろ?だからこうして見張ってやってんだろうが!」
明らかに怖がっている銀さんをよそに私は平河隊長の墓石の前に立ち、その場にゆっくりとしゃがんだ
あれ…?
「?…どうした」
『花がある…』
彼のお墓の上には新しい花が置かれていた
「オイオイ!怖ェこと言うんじゃねーよ」
私以外にもここへ来た人がいるのかな
一体誰が…。
ー 皆今まで命を落としてきた仲間全員…一度だって忘れたことねーさ ー
あぁ…そうか。
ー 大丈夫だよ結衣ちゃん。きっとみんな同じ気持ちさ ー
そうだったんだ…。
「結衣?」
『うっ…グズッ』
どうしよう…涙が止まらない。
でもこれはさっきとは違う
この花を置いた人が誰なのかわかってしまったのだ
『銀さん…っごめん、ごめんなさい!』
「…俺に謝ってどーすんの」
私を見つめ銀さんは困ったように頭を掻いた
『私っ…どうしたら…』
「…どうするかはお前自身が決めることだ。
帰りたくねーならウチ(万事屋)に居ればいい…
だが、お前の中ではもう答えは出てるんだろ?」
『でもっ』
「お?雨も止んだみてーだな、雲が晴れてらァ」
空を見上げそう言って傘を閉じた銀さんは私を見つめた
「帰れるよな」
銀さんは強く頷く私を見つめ微笑むと背中を向け歩き始めた
『ま、待って!』
慌てて彼の着物の袖を掴んだ
『あ、ありがとう銀さん…私、銀さんがいなかったらきっともっともっと迷って悩んで1人で考え込んでた…』
「!」
私は銀さんの手を取りぎゅっと握った
『もし…もしこの先銀さんに困ったことがあったら今度は私が助けるから!絶対に!』
「!…あー…あんがとよ」
少し照れたようにぶっきらぼうに笑う銀さんを見つめ私も笑った