第26章 他人の惚気話は無駄に長く感じる[杏子side]
それから私は銀さんに餡蜜を奢ってもらうという条件付きで彼と近くの公園で話をすることとなった
「それで…最近変なウィルスが世界中で大流行しててとんでもない事になってるって話でしたっけ?」
「いや誰もそんな話してねェよ!一応そっちも大事だけどね!!!」
2人してベンチに腰掛け、私は餡蜜片手に彼の話に耳を傾けた
「だからさぁ…結衣の奴がよ…その…
あれだよ!!わかんだろ!」
「いやどれですか、わかるわけないでしょう!」
銀さんの言葉にツッコミを入れると、彼は少し表情を暗くして小さく呟いた
「母親が死んだって聞いたからよ…」
「えっ…」
「なんか…気になるだろ…」
餡蜜の串を咥えながら空を見上げる彼の横顔を見つめる
「それは…」
「結衣さんの事が心配だってことですか?」
「そりゃ、な…一応妹みてぇなモンだし」
「妹…ですか」
「…」
「なるほど」
「いや何今の間!?いや、ほらアレだよ?アイツとは古いし親の顔も知ってるから気持ち分かるっつーかさ!それだけだからマジで!!」
「はぁ、何も言ってませんけど…」
別に好きなのかとか聞いたわけじゃないのにそんな慌てなくても…。
「…。」
まぁでも…彼は
多分結衣さんのこと…。
「…なんだよ」
ぼーっとその横顔を見つめていると不意にこっちを向いた彼に睨まれた
「いえ、そう言えば銀さんはどうして結衣さんの母君様の事をご存知なんですか?確か結衣さんのご実家は江戸…ではないですよね」
「あぁ…まぁ、あいつの母親には俺も何度か会ったことあるからな…
父親にも」
そう言った銀さんの目は悲しげで、でもどこか殺気にも近いその表情に私はそれ以上何も聞くことが出来なかった
「…」
「ところでさぁ杏子ちゃん…さっきの俺の質問…どうなの」
「え?あぁ…結衣さんがどうしてるかってことですか?
昨日は沖田さんと任務に出て、その後は無事には戻られたんですけど…母君様のこともあって今朝は…まだ顔を見てません」
「そうか…」
私の言葉に銀さんは静かに目を伏せ、再び表情を曇らせた