第25章 人は試練を乗り越え強くなる【真選組女中編⑤】
その後、遊園地を出た私達は日の沈む街の通りを並んで歩いた
『喜んでくれるかな…母上』
「大事なのは気持ちでィ、心配しなくてもお前の母親には伝わると思うぜ」
『…そうですね!』
沖田隊長の言葉に頷いて前を見つめる
「俺ァそれよりも今日の任務が成功したことにもっと喜ぶのかと思ってたぜィ」
『あ!そうでした!!』
任務が成功したってことは、私は晴れて1番隊に復帰出来るということになる!!
これでまた…沖田隊長の隣で戦えるんだ!
チラッと隣を歩く沖田隊長を見つめ、内心ガッツポーズを決め込むとそんな視線に気づいた彼が不審な目で私を見つめる
「なに人の顔見てニヤついてんでィ、きめェ」
『そりゃニヤつきたくもなりますよ、また隊士に戻れるんですから!…早く屯所に帰って副長に承諾を貰わなきゃ!』
「んなに待ちきれねェなら、今電話してみりゃいいんじゃねーの?」
『!!』
その手があった!
沖田隊長の言う通り、早速電話を掛けようと懐から携帯を取り出すと丁度副長からの着信が入りすぐ様電話に出た
『あ、副長ですか?今私も丁度掛けようと思ってたとこなんです!あの、任務の件なんですけど…』
[結衣、落ち着いて聞け…]
『…え』
この時、電話の先で副長が何を言っているのか
私は一瞬で理解する事が出来なかった
「…大石?」
『…』
手から滑り落ちた御守りを沖田隊長は黙って拾う
「どうしたんでィ…何かあったのか?」
いつの間にか終えていた通話の画面がプツッと消える
『母上が………
亡くなった…らしいです』
「!!」
俯く私の言葉に沖田隊長は目を大きく見開いた
『今朝方…心肺停止になって…そのまま…』
「…。」
『…あ、ハハハ‥どうしましょう、その御守り…もう必要無くなっちゃいましたね』
「大石…」
『大丈夫です!…以前からもう長くはないって言われてましたし…覚悟も出来ていましたから…私は、平気です』
言いながら沖田隊長から御守りを受け取り、微笑む
『やだな…そんな顔しないで下さいよ沖田隊長…』
悲しくないなんて言ったら嘘になる…だけど私はもう泣かないって決めたんだ。
…それなのに
『……あれ?』
どうして
『あ…ッれ?』
涙は止まってくれないんだろう…。