第25章 人は試練を乗り越え強くなる【真選組女中編⑤】
『ッ…すみません…本当に大丈夫なんです…本当にッ』
「…。」
俯き両手で何度も何度も目を擦るが、涙は次から次へと溢れ出し止まることを知らない
わかってたんだ
わかってたはずなのに…
『もう…泣かないって…決めたのにッ…』
「アホか…」
コツっと私のおでこを叩くと、沖田隊長はそのまま私をぎゅっと抱き締めた
「今は泣いてもいいんでィ…」
『…ッ…』
「これから先も…お前が泣きたい時は泣けばいい…。
我慢なんていらねェから泣きたい分だけ泣けばいい。
そのかわり、オメーが泣き止むまで俺がそばに居てやらァ」
『う…ッ…うぁあああ…!』
結局最後は子供みたいに大声で泣いてしまった私だったけど、その言葉の通り…沖田隊長は私が泣き止むまでずっとそばに居続けてくれた
それから数十分後、パンパンに目の腫れた私は未だ緩む涙腺を堪えながら沖田隊長に振り向いた
『もう大丈夫です…ありがとうございました』
失う事に慣れてはいけない…。
でも失ったからといって立ち止まるわけにもいかない。
『帰りましょう、真選組へ』
失った人達に…
母上に
私の生きる姿を胸を張って見せることが出来るように…
進もう…
「…そうだな」
大好きな人達と。
「仕方ねェから、屯所までは負ってやらァ」
そう言って背中を向けその場にしゃがむ沖田隊長を私は目を丸くして見つめた
『え?』
「まだ足痛ェんだろィ?…それにそんな面で隣歩かれる方が迷惑この上ねェからな」
『な、何を!』
「いいから、」
「今は黙って負られてろィ」
『…ッ!』
沖田隊長の言葉に何も返す言葉が見つからず、私は黙って彼の背中に身体を預けた
ずるいんだ…。
「あー重い重い」
『は!?だったら下ろしてくださいよ!!』
「オメーみたいな雌豚、普通の野郎なら背負えねェだろうな」
そうやってすぐ憎まれ口を叩くくせに、
「俺は強ェから…平気だけど」
『…』
そこから垣間見える優しさに
「オイ、寝るんじゃねェぜ」
『…』
私の心はいつも揺れ動く。
沖田隊長の背中に顔をうずめ、服の袖をぎゅっとを握り締めた
あぁ…そっか、
私はこの憎たらしくてぶっきらぼうな優しさが
『……すき』
どうしようもなく好きなんだ。