第25章 人は試練を乗り越え強くなる【真選組女中編⑤】
「まぁ確かに…理由が何であれ敵と接触したんなら瞬時の報告は必要だったかもしれねェな…」
『…』
「だが…あん時のお前の立場や状況を考えれば言いづらかった気持ちもわかる…俺も冷たく当たったりしてたからな
…悪かった」
『そ、そんなことないです!私のした事は決して許されるものじゃありませんしッ…だからその…沖田隊長は何も間違ってません!!』
そうだ…沖田隊長が謝る必要なんてない。
これまでだって私が動かなければ被害が大きくなる事もなかった。
私は誰かの為に何かがしたいと言っておいて
『全部…私が…』
結局、それは誰の為にもなっていなかった。
『私が悪いんです!…』
俯き拳をぎゅっと握り締める私を見つめ沖田隊長はそっと口を開いた
「なァ…大石、俺が何でオメーに冷たく当たってたかわかるかィ?」
『…それは…私が怪我の事を隠して任務に支障をきたしたから』
「そうじゃねェ…」
「オメーに…死なれたくなかったからでィ」
『え…』
そう言って俯く彼の表情はどこか少し悲しそうだった
「戦では死なんて覚悟の上だ…それが自分だろうと仲間だろうと振り返り嘆くつもりはねェ…けど俺ァ…お前には生きてて欲しい」
沖田隊長はゆっくりと顔を上げ、真っ直ぐに私を見つめた
「お前は大事な奴らの為なら死なんて覚悟の上なのかもしれねェが少なくとも俺ァ…お前が血を流す姿なんて御免なんでィ」
『…沖田隊長…』
「オメーが俺達を護るなら…俺達にもお前を護る権利がある。…だろィ?」
そうか…
やっぱり…
『私もです…』
想いは同じだった…。
『沖田隊長は強いです…だから誰も頼らないし、私なんかが居たところで逆に足でまといになるかもしれない…』
それでも、
『それでも私は仲間です!』
「…」
『知らないなら知りたいと思うし、例え無力でも力になりたいと思います…だから沖田隊長も1人で抱え込まないで下さい…』
「…」
あなたも私にとっては決して失いたくない大切な人なのだから…。
俯き肩を震わせる私の手を取り、沖田隊長はそっと呟いた
「じゃあ…今教えてやろうかィ」
『…え?』
「俺の気持ち…」
そう言ってゆっくりと顔を近づける彼に私は思わず顔が真っ赤になった
『お…きた隊長…の気持ち?』
「大石…俺ァ…お前のこと…」
