第25章 人は試練を乗り越え強くなる【真選組女中編⑤】
『沖田隊長、今日はその…色々とすみませんでした』
「…?」
『副長の前では出来るって自信アリ気に答えてたくせに…結局これといった成果も得られず、そして挙句の果てには…
こんな身動きの取れない空間に長時間いることになってしまって…』
勢いよくゴンドラを指差し、肩を落とす私を沖田隊長は無表情で見つめた
『本当に…自分が情けないです』
「慣れてねェことづくしで疲れてんだろ、明日になりゃまたいつものドジでお人好しで女子力のねェ雌豚に戻ってらァ」
『いやそれ戻ってるんですか、戻っても良いこと無さそうなんですけど』
沖田隊長の言葉にツッコミを入れると彼は小さく溜息をついた
「オメーはいつも考え過ぎなんでィ、戦では頭がキレる奴が生き残るが時には頭空っぽにすんのも必要だぜ」
『…でも、きっとそれだけじゃないんです』
慣れないことや不安で考え込むことは確かにある…
でもそれは1人の時だって同じだ…。
きっと今考えてしまうのは…沖田隊長が一緒だから。
『沖田隊長…あの時…真選組の皆が将軍護衛ですまいるにいた時のこと…』
「…」
『本当は気付いてたんですよね…?隣にいたのが私ってことも』
それでも、副長には言わないでくれた
『本当にすみませんでした、そして倒れた私を屯所まで運んで下さって…ありがとうございました』
言いながら頭を下げる私を沖田隊長は黙って見つめた
『ずっと言いたかったんです…でも本当のことを話して気まずくなるのが嫌で…ずっと逃げてたんです』
『でも沖田隊長は私を信頼してくれているのに…隠し事なんて出来るわけない…そう思って今日一日はずっと罪悪感でいっぱいでした』
こんな状態で任務を終えて隊士に戻ったって意味が無い。
私は沖田隊長の隣じゃないと…
『どうか…例えこの任務が成功に終わらなくても
沖田隊長の傍にいることを許して下さい!』
勢いよく叫ぶ私に沖田隊長は再度溜息をつき、頭を押さえた
「オメー…それ無意識かィ?」
『え?』
「いや…じゃなきゃ普通言えねェよな、そんなこと」
ボソッと何かを呟く沖田隊長に私は黙って首を傾げた
「やっぱオメーはどこにいても変わらねェな…」
この時、沖田隊長が何を思ってそう言ったのかはわからなかったけど…
いつもより優しい彼の表情から
私は何故だか目を逸らす事が出来なかった
