第4章 知り合いは多いと得をする
「帰るぜィ土方さんがお呼びでさァ」
『えっ!あ、』
「大変だねー沖田くん」
私の腕を引きながら銀さんの言葉に沖田隊長が振り返った
「一応コイツの上司なんで」
「もうちっと優しくしてやれよ」
銀さんの言った言葉の意味を考える間もなく私は沖田隊長によって外へ連れ出された
ていうかまだ仕事中なのに。
二人して屯所への道を歩いていると突然沖田隊長は立ち止まり私の方を向いた
「お前、それどうしたんでィ」
『え?あっ…』
沖田隊長の目線を辿ると自分が付けていた簪が目に入った
『これはその…銀さんに貰って…』
「…ふーん」
『あ、でも仕事のときは付けませんから!!』
「あっそ」
あっそって…そっちから聞いてきたくせに。
沖田隊長はさほど興味がないのか、前を向き再び歩き始めた
『そういう沖田隊長こそ、どうして隊服なんですか?確か今日は非番じゃなかったでしたっけ?』
「だからさっき言ったろィ?土方さんに一番隊が呼び出されてんでさァ」
そうか…それで私を迎えに…。
でもどうして私が万事屋にいるってわかったんだろう。
『呼び出しって…事件ですかね?』
「さーねィ」
二人してしばらく通りを歩いた
『あ!そういえば私来週誕生日なんですよ』
「ヘェ…」
『あ、ひょっとして銀さんがこれくれたのって私の誕生日のこと知ってたからですかね?』
そう言って簪を見つめる
「…ばーか」
『ば、ばか!?』
再び歩き始めた沖田隊長を追いかける
『…』
「…」
『沖田隊長は何かくれないんですか?』
「やるわけねーだろ」
『えー…』
「お前の好みなんか知るかってんでィ」
ぶっきらぼうに言って顔をしかめる沖田隊長が何だか少しだけ可愛く見えた
『可愛い系のがいいですね』
「いや聞いてねーし」
『あ、私このウサギさんのストラップがいいです』
「ウサギさん言うな」
目の前の小さなウサギのストラップを見つめた
『可愛い…』
「…」
そんな私を無視して沖田隊長は先々歩いて行く
その後を急いで追いかけると沖田隊長が振り返った
「ま、豚の置物ならくれてやってもいいぜ」
『豚!?』
ぽかんっと口を開けたまま固まる私にククッと笑いながら沖田隊長はまた歩き出した
本当は何を貰っても嬉しいんだけど、何だか悔しいので沖田隊長には言わないでおこう