第20章 傷は目に見えるモノだけとは限らない
『そう言えば沖田隊長…どうしてこっちにいるんですか?』
「あぁ、どうやら土方さんの計画は敵さんには想定内だったみてェでさァ」
沖田隊長の言葉に私は眉間に皺を寄せた
「おかげで正面は軽く突破出来たが、裏からのオメーらが苦戦してんのは間違いねェだろうから俺1人こっちに回れと指示されたんでィ…。」
そう言って沖田隊長は走る足を止め、同じく立ち止まる私に手を伸ばした
『…痛ッ』
「……遅くなっちまったけどな」
切れた頬から滲む血を指で拭いながら少し切なそうに顔を歪める沖田隊長に私は改めて自分の無力さを実感する
『…沖ッ』
ー オイ総悟、きこえるか ー
私が言いかけた時、沖田隊長の無線から土方さんの声が聞こえてきた
「聞こえてますよ土方さん」
ー そっちの状況はどうだ ー
「敵は殲滅しやしたが隊士3名が死亡、大石は無事でさァ」
『…』
ー …わかった。こっちは負傷者はいるが全員無事だ。後処理は2番隊に任せる、お前らは先に屯所へ戻って傷の手当てをしろ ー
土方さんとの通信を終え、沖田隊長は私に振り向き言った
「任務完了だってよ、俺らは先に屯所へ戻るぜ」
『…。』
任務…完了…?
「オイ聞いてんのか、」
『…完了なんて…してません』
「…は?」
違う…私の任務は…
こんなはずじゃなかった…。
「大石…?」
どうして全員無事じゃなかったの?
私はそっと自分の両手に目を向ける
どうして私はこんなにも…血だらけなの?
この返り血は誰の?この腕はどうして痛むの?
- お前はもう十分戦いの術をわかってる。
これからはお前が己自身で考え行動し、隊士達に道を示す番だ -
違う…違うッ!
「大石…オイ、」
沖田隊長が私の肩を掴み軽く揺さぶるが、今の私には彼の声を耳に入れる余裕はなかった
『私…は、何も!!』
「は…お前何言ってやがんでィ」
叫ぶ私を沖田隊長は目を見開いて見つめる
私のせいで…私が…ッ!
「…いいからとにかく、帰るぜィ」
そう言って沖田隊長は私の腕を強く引っ張った
『いッだ!…』
「!?」
その場で蹲る私を見つめ、沖田隊長はガバッと私の右足を持ち上げ裾を捲る
「!…お前…」
『ッ…』