第20章 傷は目に見えるモノだけとは限らない
隊士の言葉に反応し下を向いた瞬間、床の下から刀が飛び出し私の肩を掠めた
『ッ!』
下にも部屋が…!?
でも土方さんの情報ではここに地下はないはずッ…!
次々と床から刀が飛び出し私は壁際まで追い詰められる
『っ、一体何人いるんだ!』
「真選組1番隊大石結衣、覚悟ーッ!!」
勢い良く刀を振りかざす目の前の男を避けようと足を動かした瞬間、右足が今までにないほど酷く痛み思わずその場に蹲る
その為振り下ろされた刀を避け切るとこが出来ず、刃は私の瞼の上を大きく掠めた
『ぐッ…』
「大石ちゃん!」
駄目だ…血で前が見えないッ
ザシュッ
『うあ"ッ!』
腕を斬られ、手から刀が滑り落ちる
「大石…うあッ!」
『!!』
薄暗い部屋の中、私の横にいた隊士2人が倒れる
『ッしっかりしてください!!』
駆け寄り身体を支えるが2人とも背中に大きな傷を負い、とても動ける状態ではない
…どうしたら…
「大石、後ろだ!」
『!?』
ドンッと私を突き飛ばした隊士はザシュッという鈍い音と同時に目の前で血を流し倒れた
『そんな…ッ』
動かない隊士の傍に膝をつき俯く
私の…せいで…。
すると次の瞬間、数人の浪士が私に向け一斉に刀を振り下ろした
『ッ!!』
ギュッと目を瞑り蹲るが、いつまで経っても痛みが襲って来ることはなかった
私がゆっくりと目を開けると辺りは血の海で、先程の攘夷浪士達が血を流し、一斉にその場に倒れていた
「…何してやがんでィ」
そう言って私の前に立つその人物に顔を上げる
『お…きた、隊長…』
そこにいたのは沖田隊長だったのだ。
「…」
沖田隊長は浪士から視線を私に移すと刀を持つ手をピクりと動かし目を見開いた
『沖…私どうしたら…みんな…動かない』
肩を震わせながら沖田隊長を見つめると、彼は表情ひとつ変えることなく私に手を差し出した
「立て…」
『!』
「戦いはまだ終わってねェ、仲間の死を無駄にするつもりかィ」
沖田隊長の言葉にハッとなり、私はそっと差し出された手を掴んだ
『ッ!』
手を引っ張られ立ち上がった瞬間再びズキッと右足が痛んだ
「…足…どうかしたのか」
『いえ!…問題ありません』
言いながら先を歩く私を沖田隊長は不審な目で見つめた