第20章 傷は目に見えるモノだけとは限らない
ということがあり、私は明日の任務に最も重要な役を副長に任されたのだ。
いつも沖田隊長の後ろをただ付いていくことしか出来なかったけど…ついに、ついにこの時が来た!
「つまりアレか、表の斬り込み隊長は沖田隊長で裏の斬り込み隊長が大石ってことか」
『はい!』
「終わったな1番隊」
『ちょ、何でですか!』
原田隊長の言葉にガクッと肩を落とす
「お前、斬り込み隊長の意味わかってんのか?誰よりも先陣切って敵の中に飛び込み、瞬時に相手を斬れねェといけないんだぜ…。沖田隊長のやってることをお前が出来るとは思えねェよ」
『そ、そんなのやってみないとわからないじゃないですか!それに、これは他ならぬその沖田隊長の案なんですよ?』
少し強めの口調で言うと原田隊長は「案ねェ…」と言って顔を歪める
確かに…不安はないと言えば嘘になる。
副長はああ言ってたけど、実際は敵1人斬るだけでもまだ精一杯だ。
それでも、あの沖田隊長が私の実力を認め、今回この任務を任せてくれた。
私は何としても、その期待に応えなければならない!
そして今度こそ…。
俯きながら歩いていた次の瞬間、突然背後から殺気を感じ反射的に刀に手を掛ける
『原田隊長、』
「!いるのか…」
『はい…電柱の後ろと反対の角に2人…』
私の言葉に同じく刀に手を掛けながら原田隊長はほくそ笑んだ
「それじゃ予行練習といきますか、斬り込み隊長殿」
『…はいッ』
2人して同時に後ろを振り向き、それぞれの相手に斬り掛かる
ザシュッ、バシッ
「ぐあッ!」
『やっぱり沖田隊長みたいには無理か…』
でも路地裏で良かった…人目について騒ぎになったら面倒だ
目の前に倒れる浪士の死体を見つめていると、原田隊長が斬った敵を引きずりながらこちらへやって来た
「斬り込み隊長、顔の返り血が半端じゃねェぞ」
『えっ?』
原田隊長に言われ自身の顔に触れると、手にはさっき斬った浪士の血がべっとりと付いていて思わず溜息をついた
街中での斬り合いでは、なるべく返り血をつけないよう言われてたのに…。
「明日が不安だな」
『そ、そんなことないです!明日は街中じゃないですし…』
言いながら原田隊長の方を向いたその時
『原田隊長ッ後ろ!』
突然彼の背後から刀を振りかざす人物の姿が見え、私は勢いよく彼を突き飛ばした