第20章 傷は目に見えるモノだけとは限らない
「はぁ?お前が斬り込み隊長だ!?」
『はいっ!』
目を見開いて私を見つめる原田隊長に笑顔で頷いた
「待て待て、斬り込み隊長っていやァ…沖田隊長のことだろ。何でお前?」
『副長に任されたからに決まってるじゃないですか!』
私の言葉に原田隊長は眉間に皺を寄せた
そう、あれは今朝のミーティングでのことだった。
【回想】
「いいかテメェら!明日は攘夷浪士共の目撃情報が多いとする廃墟へ出撃する!くれぐれも気ィ抜くんじゃねーぞ!」
「「はっ!」」
いつも以上に熱気の入った副長の声に隊士たちは一斉に声を揃える
「それから結衣、」
『はい!』
「後で話がある」
『?』
会議が終わり、副長と私だけになった部屋で私はそっと口を開いた
『あの副長、私に話って何でしょうか?』
「あぁ、取り敢えずそこに座れ」
言われるがまま副長の目の前に座ると、彼は少し低めの声で話し始めた
「明日の出撃の件…お前も浪士共と剣を交じ合わせることになる」
『はいッ!必ずや浪士共を一網打尽にしてやりますよ!』
「あぁ、今回は何せ人数が多いからな…お前ら1番隊にはかなり動いてもらうことになるだろう」
『…過激派ですか?』
私の言葉に頷き、土方さんは煙草を噴かせる
「穏健派に比べ過激派の連中は常に周りを警戒し、隙があまりねェ。突撃する前に気づかれちゃ計画の全てが水の泡だ。恐らく奴らが最も警戒しているのは総悟、もしくはお前ら1番隊」
『ですが1番隊は他方の出入口から数人に別れ、それぞれ突入すると…』
「あぁ、総悟は勿論正面だ」
『では私は沖田隊長の援護に…』
「いや、お前は裏にまわれ」
『裏って…隊長から1番遠い場所ですよ!?もし万が一があってもフォローに回るまで時間がっ』
「フォローに回る必要はねェ、表は総悟に任せる…裏は結衣、お前が指揮を執れ」
土方さんの言葉に私は目を見開いた
『ふ、副長!私が指揮を執るなんて…そんな、無理ですよ!』
「無理じゃねェだろ、お前はもう十分戦いの術をわかってる。
これからはお前が己自身で考え行動し、隊士達に道を示す番だ」
『でも…私に、出来るでしょうか』
「それはお前次第だ。…だがこれは俺の案でも近藤さんの案でもない…総悟が決めたことだ」
沖田隊長が…?
「試してみる価値はあると思うぜ…」