第18章 約束は早くしたもん勝ち
「真選組に入れば…剣士として認められれば去って行った門下生達も戻ってくるかもしれないと思い、初めはその為だけに入隊を決意していました。けど今は、ここを去るのも何だか惜しくなりました」
『え?』
杏子ちゃんは頬を少し赤らめ俯く
「入隊が決まった時…初めて私に声をかけて下さったのが山崎さんだったんです」
- おめでとう倉本さん、女の子なのに凄いね -
- ありがとうございます。よろしくお願いします! -
- うん!よろしくね -
「その笑顔に私はひと目で恋に落ちました」
『笑顔で!?』
「それからも山崎さんは他の隊士の人達とは違っていて…地味なんて言われてますけど寧ろ私の目には誰よりも存在感で溢れて映って見えました!」
言いながら目をキラキラさせる杏子ちゃんを見つめ微笑む
『けど、そんな風に想われてるなんて知ったら山崎さんきっと喜ぶと思うよ』
「…だといいんですけどね」
そう言った彼女の顔が一瞬曇った気がした
『…杏子ちゃん?』
「…。」
- でも本当に凄いよ、まさか剣術で副長達を圧倒しちゃうなんて… -
- あれ、でも確か真選組にはもう1人女の人がいましたよね? -
- うん、大石結衣ちゃんだよ。けど彼女は少し特別だな… -
- 特別? -
- 彼女は倉本さんみたいに剣術に優れて入隊したわけじゃないんだよ。大切な人を失って…それでもまだ必死に前を向いて戦ってる。俺らは彼女をただ見守ることしか出来ないのに…ほんと強いよね。 -
- 山崎さん…。 -
- いつか俺が支えてあげられたらな、なんて思ってたけど俺の力がなくても彼女はもう充分笑えてた。…だから俺は俺なりにあの2人を見守るって決めたんだ。 -
- あの2人…? -
「…そっか、沖田さんとのことだったんですね…」
『え、沖田隊長?』
「…いえッ。……まぁとにかく、私も頑張りますよって話です!」
『…そっか』
「…。」
ねぇ、山崎さん。
あなたにそんな顔をさせる目の前の人は
どうやら貴方の気持ちにも自分の気持ちにも気づいていない鈍感さんみたい。
あなたの辛い笑顔はもう見たくないけれど
まだ、もう少しだけこの片想いでいさせて下さい。
『ね、餡蜜食べない?』
「…はいッ!」
いつか貴方を必ず振り向かせてみせるから…。