第17章 新しい事を始める前に古いものは片付けろ
『はぁぁぁぁー』
「あの…隣で盛大に溜息つくのやめてもらえないかな」
『あ、すみません…』
あれから副長の指示通り山崎さんと見回りをしているわけだけど、モヤモヤすると言うか…何か腑に落ちないところもある。
『なんだかなぁ…』
再び溜息をつく私に山崎さんが言った
「…もしかして屯所の案内…本当は自分がやりたかったとか?」
『あ…いや別にそういうわけでは…』
私の言葉に山崎さんは少し考える素振りを見せるとポンッと手を叩いて人差し指を立てた
「あ、そっか!沖田隊長を取られちゃったから拗ねてるんだ」
『なッ…ち、違います!!』
「…違うの?」
『あ…えっと……違いますね』
「あれ、考えての否定!?」
全く違うといえば嘘になるかもしれない…。
沖田隊長がサボり癖のある人だってのは前からわかってたことだけど…だだ、あんなことがあった後だから…。
脳裏に浮かぶのは沖田隊長と母上の会話
ちょっとは私のこと想ってくれていたのかもしれないと期待してた…。
ん…期待!?
『いやいやいや!違いますよ、何言ってんですか山崎さん』
「いや何も言ってないんだけど」
「う…変な想像したら何か気持ち悪くなってきた」
「結衣ちゃんってたまに俺のメンタル壊しに来るよね」
ハッと我に返ると涙目になっている山崎さんに気づき慌てて山崎さんのことじゃないと訂正した
『す、すいません…少し考え事をしてて。…何だか私、最近少し変なんです』
「変って…?」
『今までは女として扱われるのが凄く嫌で…女だからって馬鹿にされないよう剣の腕を磨くことだけに一生懸命努力してきたつもりでした…。けど今はその逆というか…侍であり、女である私をありのまま受け入れてくれることが嬉しくて…そうしていくうちに今まで考えもしなかったことや色んな欲が出るようになって…』
『真選組に入ろう…侍になろうと決めたのはあの人との約束の為…そして近藤さんについて行こうと思ったからなのに…いつの間にか私には他にも護りたいものがたくさん出来てしまった』
傷ついてほしくない…けど誰も私の前から消えないでほしい。
女々しくて自分勝手な…欲。
『私…どこか皆に甘えてるんです。女だからみんな理解してくれる、だから大丈夫だって。でもそんなんじゃ強くなんてなれない』
女の私は…いらないんだ。