第16章 無意識ほどタチの悪いものはない【帰省編④】
『と思ったけど今回は例外!やっぱり泣かずにはいられない!グズッ』
電車の中で思いっきり顔を濡らす私を沖田隊長は呆れたように見つめた
「そんなに泣くくれェなら残った方が良かったんじゃねーの?」
『な、何言ってんですか!これは自分で決めたことなんです!確かに寂しいですけど…私は真選組が好きなんです!!』
勢い良く叫ぶと沖田隊長は耳を塞ぎながら"はいはい"と言って薄ら笑いを浮かべた
「つーか…前から思ってたが、お前何でメイドや執事に対して敬語なんでィ」
『え?』
「別に敬語が悪いわけじゃねェけど、何か違和感っつーか。一応そんなんでもテメェは財閥の娘なわけだし…」
『そんなんって何ですか、しばきますよ』
「もうちょっと偉そうにしてもいいんじゃねーのかィ?」
沖田隊長の言葉に私は視線を窓の外に移した
『…別に私は彼らと財閥の娘として接してるつもりなんてないですから。彼らは友達であり私の家族なんです』
「…」
『みなさんと出逢った時も私は最初からメイドや執事として扱う気なんてありませんでした…。ただ傍にいてくれるなら…それ以上は何も望まない』
そう言って俯き気味に笑う私に沖田隊長は何も言わなかった
『でもそれも結局私の我儘なんです…。彼らを救う代わりにここに縛り付けるようなことをしてしまった』
どれだけ裕福な生活を送っていても本当に欲しいものは手に入らない。
『今でも思うんです…私は仲間や家族と呼べる存在を得る為だけに…彼らの人生を奪ってしまっているんじゃないかって…』
だったら私は…。
「お菊さんが…」
『えっ』
「もっとお前に頼ってほしいって…言ってた」
『…』
「執事やメイドとしてではなく…家族として。
みんなにとってお前は…もう他人には戻れねェ存在なのかもな」
『……また泣きそう』
「勘弁しろィ…」
でもずっと変わらないものがそこにあるとすれば
それはお互いに想い合っているということ。
『でも不思議ですね、友達や家族はそういう繋がりでしか手に入れることが出来ないものだと思ってたのに…いつの間にか私にはかけがえのない人達がたくさん出来た』
どれも大切で壊したくない私の宝物。
『もちろん沖田隊長もその中の1人なんですよ!』
そう言って笑うと沖田隊長もそっと微笑む
その表情に私はまた胸が締め付けられた