第16章 無意識ほどタチの悪いものはない【帰省編④】
翌日
「うわ、ぶっさー」
『ほっといてください!』
昨日は自分の部屋に戻っても結局眠ることが出来きず、気づけば朝を迎えていた私は目の下にクマを作ったまま皆が集まるロビーにいた
そんな私とは反対に沖田隊長はよく眠れたみたいだった
…もしかして昨日のは…私の夢?
いやだとしたら私は何て夢見てるんだ!!!
思い出すだけでも恥ずかしい…。
そして、
「いいですか、結衣様。ちゃんと朝昼晩の三食、ご飯食べて下さいね」
『…はい』
「そして風呂に入った後、寝る前は必ず髪の毛を乾かすこと!」
『…わ、わかりました』
「胡座はかかないこと。何もかも1人でやろうとしないこと!」
『わ、わかってますって…』
「あと夜更かしは美容の大敵なので、遅くとも夜9時には寝ること、知らない人には絶対について行かないこと!」
『子供!?』
相変わらずお菊さんは心配性だった
「それから…」
『?』
「また…必ずお会い出来ると約束してくださいますか?」
『お菊さん…』
切ない顔をして俯くお菊さんを私はそっと抱き締めた
『そんなの…当たり前じゃないですか。私は皆さんの為ならいつどこにいても会いに行きます…必ず!』
そう言って笑うとお菊さんもそっと笑い返してくれた
「オイ大石、そろそろ電車来ちまうぜィ」
『あ、はい。…あの…お菊さん!…』
「わかってます。旦那様と琉生様には私から話しておきますよ」
『ありがとうございます…それから、母上のことも…よろしくお願いします』
「はい。結衣様も…どうかお気をつけて」
お菊さんやみんなに会釈して私は沖田隊長とその場を後にした
父上はまだ私を許してはくれないだろう。
寧ろ彼を裏切る形になってしまったのだから、許されるはずもない…
だけど私はもう立ち止まるのはやめた。
護りたい人…支えてくれる仲間がいるから
それが私の生きる意味になる。
だから私はもう涙は流さない、
ゆっくりでもいい、確実に前に進んでいく為に。