第16章 無意識ほどタチの悪いものはない【帰省編④】
『お菊さんッ桶!』
バンッと勢いよく扉を開けるとお菊さんは目を丸くして私を見つめた
「どうかなさいましたか?」
『お、沖田隊長がお酒飲んでしまって…た、大変なことに!』
「あら、まー大変」
『いや何落ち着いてるんですか!今にもリバースしそうなんですよ!!早く桶か何かを…』
「そんな慌てずに、そこに座って下さい。髪を整えますから…」
『いやいやいや、人の話聞いてました!?早くしないと部屋がモザイクに…』
「大丈夫ですよ。あのお酒、アルコール入ってませんから」
…え。
『…え、ど、どういうことですか?』
「ですから、あの客室にある瓶は確かにお酒の瓶ですけど、アルコールは入ってないんですよ」
お菊さんの言葉に私の頭は更に混乱する
あれ?…だって沖田隊長酔ってたから気持ち悪いって…吐きそうって…。
でもアルコール入ってなかったってことは…あれ?
頭にハテナを浮かべる私をよそにお菊さんは大雑把に切られた私の髪を整えていく
『…てことはあの…沖田隊長は酔ってないということですか?』
「…そういうことでしょうね。…ですから部屋がモザイクになる心配はありませんよ」
平然と話す彼女に私は何一つ返す言葉が思いつかなかった
しばらくして「出来ましたよ」と言うお菊さんの声と同時に鏡の前に立たされる
『あ、ありがとうございます』
「やっぱり髪が短くても結衣様は可愛らしいですね!」
『あはは…』
お菊さんに抱き締められ苦笑いを浮かべた
「…もう遅いですしそろそろ部屋にお戻りになられてはいかがですか?」
『…』
「まだ気になることが?」
『いえ…ただその…どうして沖田隊長は酔ったフリなんか…』
「…先程までお二人でどんな会話をされていたのですか?」
さっきは…
- それ、最大の殺し文句だぜィ? -
あ。そうだ…私沖田隊長に…。
-大石〜…俺ァ前からオメーのことが… -
『ッ!!』
次の瞬間、私の頭からボッと湯気が出た
「結衣…様?」
『あああのッ、な、何でもないです!!何か私疲れてるみたいで…き、今日は自分の部屋で休みます!お、おやすみなさい!!!』
そう言って再び勢いよく扉を開け、お菊さんの部屋を後にした
ウソこれ…ヤダこれ!!
私は明日…一体どんな顔して沖田隊長に会えばいいんだぁああ!!