第16章 無意識ほどタチの悪いものはない【帰省編④】
『え…』
いきなりのことで頭が真っ白になった私はそのままゆっくりと顔を近づけてくる沖田隊長から動くことが出来なかった
『あ…お、沖田隊長…近っ…』
首筋に沖田隊長の息が触れる
『ちょ、』
「大石…俺ァ…」
え…っ。
「前から…オメーのことが…」
『ッ!』
「気持ち悪ィ〜…」
…は?
「ヴ…吐きそう…」
『は!?ちょ、何して…』
ぐた〜っと、もたれかかってくる隊長の体を支えると同時にむわっとした独特な臭いが漂う
さ、酒臭ッ!!
『お、沖田隊長!いつの間にお酒なんか飲んだんですか!』
「んァ…そこにあったァ…」
そう言って彼の指差す先には冷蔵庫に入っていたはずの数本の酒瓶が畳の上に転がっていた
あ、あれは客人用の…しかも超絶強いお酒じゃないか!!
「大石〜吐きそう、助け…あ、駄目だこれもう吐くわ」
『ちょちょちょちょ!待ってください!!今お菊さんにお水と何か桶みたいな物貰ってきますからッ。と、とりあえず横になってて下さい』
言いながら沖田隊長を布団の上に寝かせると、彼は真っ赤な顔で苦しそうに顔を歪める
『あの…本当に大丈夫ですか沖田隊長…』
「だ…大丈夫なわけねェだろィ、この雌豚!」
『悪口は健在なんですね…』
「バカ、ドジ、マヌケ、泣き虫、まな板、低女子力!」
『あの、あそこの酒瓶で殴ってもいいですか』
「お前……まじで鈍感………面倒臭ェ…」
『はい?』
ブツブツと何か言う沖田隊長の言葉は上手く聞き取ることが出来なかった
『お、沖田隊長…?』
そーっと沖田隊長の顔を覗くと
「早く行け、殺すぞ」
『す、すみませんでしたぁあああ!!!』
さっきとは打って変わって物凄い形相で睨まれた為、私は急いでお菊さんの元へ向かって走った