第16章 無意識ほどタチの悪いものはない【帰省編④】
数分後
「ったく痛ェな…いきなり何しやがんでェ」
『す、すみません…けどだからって女の子の頭殴りますか普通…』
「俺はやられたらやり返す主義でィ」
頭に出来たたんこぶを擦っていると再び沖田隊長と目が合った
『…』
「…?何でィ」
『いえ!別に…』
だ、駄目だ、全然普通に出来ない!!
やっぱりおかしいってこれ!絶対何かの病気だ!!
だって…なんか、さっきから沖田隊長の顔が…
「…?」
キラキラして見える!!!
『しっかりしろ私ィィイイ!!』
「…オメー、まじで頭大丈夫かィ」
柱に頭を打ちつける私を沖田隊長は不審な目で見つめた
一刻も早くここから逃げ出したい衝動に駆られていると、不意に沖田隊長が私の髪に触れたので思わず反射的に身構えた
『な、何ですかっ…』
「いや、髪…切れちまったなって」
『あ…』
沖田隊長の目線を辿り自分の髪に手を触れる
『…これは自分でやったんですよ』
「…」
『父上は何も変わっていませんでした…。でも私は違う、私はちゃんと変わったんだって…父上に証明したかったんです』
"髪を切ったのはその為だ"と言うと沖田隊長は何も言わず俯いた
『あ…でも結構軽くなったし、これはこれで良いなって思ってるんですよ』
言いながら沖田隊長を見ると彼は悔しそうに私を見つめる
『沖田隊長…これは私なりのケジメなんです。…今のままじゃ何も変われない、私は自分の意志でこの道を選んだんです。だから…』
だから、あなたがそんな顔をする必要はないんですよ。
沖田隊長は私の髪を触りながらそっと微笑んだ
その表情に私の胸はまた締め付けられる
『あ…えっと、それにほら!私って元々あまり女子力とか無かった方ですし、髪切るくらい…どうってことないですよ!』
「確かに…オメーは女子力低いけど…」
『あ、そこは否定してくれないんですね』
「けど…女にとって髪は命の次に大事、なんだろィ」
そう言って目を伏せる沖田隊長に私はそっと微笑んだ
『…でも、綺麗な服やまとめる髪がなくったって私は私です。決められたレールの上を走るより自分の信じた道を歩いて行きたいんです…』
例えそれがどんなに険しい道のりであっても。
ゆっくりでもいい、私は自分の進むべき方向は自分自身の力で見つけていきたいんだ。