【ヒロアカ】暴走する、疾風と雷のジャンクフード【上鳴電気】
第3章 幸せな非日常が交差する
「ねね、ところで出久ちゃんの個性はどんなヤツなんスか、強化系?それとも俺と同じ操作系とか?」
「…っ」
あれ、さっきまでは意気揚々と語っていた出久ちゃんだったのに、急に押し黙っちゃった?
つんつんとすっかり顔を青くしたり赤くなったりを繰り返している彼の頬をつつきつつ、お腹でも痛いのかな、と首をこてんと傾けあれやこれやと思案する。
…いやもしかしたら、本人が語りたくないような個性なのかも。それだったらこんな事を聞いてしまっては申し訳ないな。
「喋りたくないなら喋らなくてイ」
「いや別に言いたくないとかじゃないよ。だけど何というか…うん、試験の時に見せるよ、ヒーローになりたいのは本当だから!」
口を開いた瞬間、彼は今度はあたふたと言いたくない個性って部分を否定し始めた。恥ずかしいって思うような個性ではないのだろうか。だとしたらどうして黙ってしまったんだろう。
でも本人は聞かれたくなさそうだしこれ以上の追及は止めておこう。わざわざ聞かなきゃいけないようなものでもないし。
「あ、そうだ!どうせ乗りかかった船だし、出久ちゃんも一緒に会場まで行かないッスか?」
「べ、別に僕はいいけど…山都田くんはいいの?」
「もっちろん!俺は来るもの拒まずの自他共に認めるアウェイ系男子ッスからね!」
「自分で言っちゃうんだ…」
やたー!出久ちゃんと行けるのスッゴく嬉しいッス!
その言葉を聞いた彼は若干俺のテンションの高さに引きつつもどうやら喜んでくれてたみたいなのだが、さっき友情のハグをしようとしたらナチュラルにかわされたのは忘れよう。
自分のギザギザハートにへとジリジリ染み込んでいく痛み、…それを三歩歩いて忘れてしまうつもりで、俺は校門を潜っていこうとする。
そして少なくとも今の俺達からしたら…最大級の絶望といっても過言ではない、とある音が鳴り響く。
…そう、チャイムである!
「ぐ、あああ出久ちゃん、ヤベェッス!このままだと折角の春を逃しちゃうッス!」
「うわぁぁぁ、どうしよう!僕はヒーローにならないと…ヒーローにならないといけないのに!」