【ヒロアカ】暴走する、疾風と雷のジャンクフード【上鳴電気】
第5章 "Plus Ultra"
春先の日。俺は鏡の前で、新しく通う雄英高校の制服のボタンをキッチリと留めて赤いタイを固く締める。
「…おはまーす」
何だかワクワクしすぎてよく眠れなかった。瞳の下には深い隈が出来てしまっており、その顔には幾分か生気がなくなっているように見える。どうせなら笑顔で朝を迎えたかった所なのだが、そうもいかないのが楽しいことの前日という物である。
口でそう言ってお気に入りの香水をしゅっしゅと身体に吹き掛けてから鞄を背負ってリビングにへと駆け降りていく。
「香水なんぞ色気づきやがって」とかお父さんにはやっかまれたが、人の趣味嗜好はそれぞれではなかろうか。
「おはよう山都田颯、今日は少なくてごめんな。」
テーブルの上には些か朝食らしくない、茶碗蒸しと冷えたご飯が並べられている。そういえば昨日の夕食には茶碗蒸しが出たんだった。
干しホタテが刻まれて沢山入れられている豪華なの。てことはこれは昨日の残りかな
「全然イイッスよパピー、俺って茶碗蒸しとご飯をまぜまぜして食べるの好きッスから」
「…行儀が悪いぞ、なんて言えないな」
お父さんはお母さんが入院し出してから少し食が細くなったみたいだけど、それでもしっかり自分の分は食べているようでよかった。美味しいものを食べたら元気が出るッスからね。前はお父さんはパンが苦手なのに、俺が好きだからってわざわざ用意してくれたんだ。
「…いつもありがとうッスよ」
「オッ、どうしたんだ山都田颯いきなり。俺はそんなに凄いことは何もしてないぞ?」
「行ってくるッス」
「行ってらっしゃい、頑張れよ。でも適度に休めよ」
「どっちなンスかもー」
俺は急いで家を飛び出す。ドアを開けて光の向こうにへと走り出す。
「よーっし張り切っていこ…」
「…ひでぶっ!」
「い゛ッッ゛ッ?!」
視界が火花が散るような衝撃で真っ白になり、段々視界が広がってくる。
そこには稲妻形の黒メッシュが入った金髪に鋭い瞳、俺と同様にぴょこんと跳ねた髪が印象的な少年が頭を抑えて座り込んでいた。