【ヒロアカ】暴走する、疾風と雷のジャンクフード【上鳴電気】
第3章 幸せな非日常が交差する
「すまんそん出久ちゃんっ!俺が長々と話し続けてたせいで遅刻ギリギリになって…」
「別に大丈夫だよ、そもそもは僕が山都田くんの上に乗っかっちゃったからだし」
俺は頭がのめり込むほど勢いのある土下座をすれば、彼は快く謝罪を受け入れ許してくれた。会場に向かう最中ですらまるで呪詛を吐くみたいにヒーローになりたいって言いまくってたのに、皮肉ひとつ言わないとかめちゃくちゃ良い子じゃないッスか…
どかーんと上に乗っかってきたからって、大人しい顔してヤバい子?と思ってしまったのを後で謝罪しておこう。
いざ会場に乗り込んでくると、周りの視線が容赦なく突き刺さっていくのを感じる。そりゃ自分達は今後の命運をかけて受験しようとしてるってのに、遅刻寸前で来る人なんていたら苛立つッスよね。
ふと隣を見てみると、どうやら彼も辺りにいる受験者達に睨まれまくっているようで…心を罪悪感がじわじわと蝕んでいく。
とりあえずこの場の刺さるような空気から抜け出すために、すたこらさっさと自分の座席へと向かう。出久ちゃんも少しは先ほどまで陰口を叩いていた人に邪魔されてはいたけれど、このまま問題なく席につく事ができそうだった。
先に席につき、安堵の溜め息を吐く。さぁて仕切り直しだ。まぁ仮にここでポイントを落とされたとしても、試験で巻き返しさえすれば平気平気…
若干の居心地の悪さを感じ、口をもにょらせつつも概要説明が始まるのをじぃっと待つ。…これで試験に受かりさえすれば、見事ヒーローになる事ができる。親への恩返しもちゃんとできるし、なによりあの女に復讐するのだって…
アレ? そういえば、ヒーローってどんな職業だったっけ。街中で個性を自由に行使する事ができる、悪者を倒すための兵器みたいなヤツ? いやでも何だろう、なんか違う気がする…
胸のちくちくとする感触が段々と広がっていく。…いいや。今は試験に集中しないと。お父さんも協力してくれたし、死ぬ気で頑張らないとな!
ガッツを入れるためにと、思いっ切り拳と拳同士をぶつけ合わせる。そしてその時にパァンという巨大な音が鳴り、冷や汗が流れまくっている。
「あっ、ヤバいッスこれ…」
「…そこの跳ね髪の君、少しいいか?」