【ヒロアカ】暴走する、疾風と雷のジャンクフード【上鳴電気】
第4章 スタートの警鐘はいつも突然に
「…どうして君はそんなに無理に動こうとするのかね!このまま動いたら君の身体がもたない!先ほどの様子から見るにポイントは既に十分稼いでいるのだろう!??」
「申し訳な゛いッスけどその願いは聞き届けられないッス゛ね゛ェ!俺にはアイツを倒すって使命か゛…」
「言っておくがあれは本来は倒さなくていい敵なんだぞ! それが君は分かっているのか!? どうして君はそんなに執着するんだ!」
彼と不毛な言い争いをしている内に、ふと気づけば視界の先にはサラサラとした茶色の髪な丸顔の女の子が仮想敵に潰されそうになっているのが目に入る。マトモに喰らえば大怪我は免れないだろう。
だが先ほどあの仮想敵に俺がフッ飛ばされたのは恐らくこの場にいる受験者全員が目撃している。あんなことが目の前で起きたのに、わざわざあの女の子を助けに行く人間など誰もいないだろう。誰だって我が身が大事だ。
「と゛っとと離すッスよ真面目ちゃんってば!」
「駄目に決まっているだろうが! あの女子には申し訳ないが、今の君が行ったって助けられるかどうかなんて分からないぞ!」
俺はあの女の子のコトなんて気にしていない、ただ仮想敵を倒せればそれでいいのだ。だってヒーローは敵を打ち倒す職業って言うのがセオリーじゃないか。お礼参りに行きたいって思うのだって
「?! 君、一体何をしているんだ!」
「…え、アレはまさか」
真面目ちゃんからの拘束を解くのに気を取られている内に何かが起きたらしい、ふと顔を上げると目の前には…仮想敵にへと瞳を血走らせて向かう『彼』。
「出久ちゃん……!!」
何故だ?彼はしきりに「ヒーローになりたい」と口にしていたじゃないか……あんなモノを倒したって1Pの得にさえならないのに、俺みたいにヴィランを心から憎んでるってワケでもないだろうに、どうして…!
…そういえば昔、俺が「ヒーローは敵を倒して皆からお金を貰ってるんだよね?」とお父さんに尋ねた時、いきなり真剣な顔つきになって、こう言っていたような気がする。今の俺はもうすっかり忘れていた、小さな小さなそんな言葉。
「あのな颯、ヒーローってのはな、ただ敵を倒すだけの職業じゃないんだぞ?」
「仲間と一緒に人々を救い…皆を幸せにする、魔法使いみたいな仕事なんだよ」