【ヒロアカ】暴走する、疾風と雷のジャンクフード【上鳴電気】
第4章 スタートの警鐘はいつも突然に
…どうして忘れてしまっていたのだろう。
正直、俺は今まで自分はヒーロー向きの人間だと思っていた。乗り物を自在に操り攻撃にも転用できるというバランス型の個性に、英雄らしい派手な見た目。
でもそうじゃなくて。ヒーローっていうのは今の出久ちゃんみたいな…人々を救い、夢と希望を与える存在じゃないか。…どうして今まですっかり頭から抜け落ちてしまっていたのだろう。
__そうと決まれば、俺がするべきコトは…
俺は唯一負傷していなかった右手を使い、残りの力を振り絞って造り出した強烈な光を放つヘッドライトをあのデカブツの目の前に投げつける。
そうするとデカブツはその光の方に気をとられ、余所見をしてしまう。そしてそこに全速力で走る出久ちゃんが迫っていき…
そのまま仮想敵の胴体部分に強力な拳での一撃を御見舞いした。仮想敵は大きく後退し、やがてミシミシと音を立てながら倒伏する。
「勝ったッ!第三部完ッ!」
「君が倒した訳ではないだろう?!」
「俺もアレの気を引いたじゃないッスか…ってあ、出久ちゃんが落ちてきてる!」
「なんだと、急がなければッ!」
真面目ちゃんは光速には及ばずとも、旗から見ていても末恐ろしく感じるほどの速さで出久ちゃんの落下地点にまで向かっていった。むむ、個性の応用性なら俺の方が上でも、単純な速さなら彼のが上かもしれないッスね…そうだ、あの女の子はどうなったのだろう。
気になった俺が目の前を目を凝らして見つめていると、真面目ちゃんと対話しつつ出久ちゃんを手に抱えている女の子の姿が見えた。というかあの女の子試験中に何度か吐きかけている場面を見たけど大丈夫なのだろうか。
俺は未だに続いているジンジンとした痛みを堪えながら何とか出久ちゃん達のいる方に身体を這いずりながら近づいていく。
「…だ、ダイジョブッスか出久ちゃんは?あのデカブツ凄い力で殴ってたッスけど怪我とかないッスか?」
「まだ動かない方がいいと言ったではないか…」
「この子はとりあえず怪我をしてるみたいやね、腕が紫色になってる…というか君も大丈夫…じゃなさそうやな。あの仮想敵に吹き飛ばされとったけど…」
「俺は気にしなくてもヘーキッス、それより出久ちゃんを何とかしないと」
「…うう、い、一ポイントでも取らなきゃ…」
「無理をしてはダメだ!」
「でも…」
