【ヒロアカ】暴走する、疾風と雷のジャンクフード【上鳴電気】
第4章 スタートの警鐘はいつも突然に
それぞれの準備を終えた受験生達は足早にバスに乗り込み、演習会場にへと向う。
揺られながら試験が開始されるのを待つ内に徐々に今までは抑えていた筈の眠気が自らを苛んでくる。「少しくらいならイイよね」とうとうとしつつ周りの座席でみんなが何をしてるのかなとぼんやり眺めていると、忙しなくストレッチを行っている出久ちゃんが瞳に映る。…本当に、ヒーローになるために頑張っているんスね。
試験の開始される直前。俺は何度も深呼吸を繰り返したり、鞄のなかを整理したり、脳裏で自分が華麗に仮想ヴィランを倒す姿を思い描いてはみたものの、それでもやっぱ爆走(はし)る時のしゅばーんとした清々しい、まるで摩天楼を駆け抜けるような感覚は得るコトができない。
…やっぱり俺は考えるより先に動く方が性に合ってるッスよね。そう思い直し静かに時を待つ。
「ハイ、スタート!」
そしてついにプレゼント・マイクの合図と共に、戦いの火蓋は切って落とされた。
突然の合図に始めはフリーズしていた人間も何人か居たものの、流石にヒーロー試験を受けるだけはある。すぐに体勢を整えて皆が皆全速力で仮想ヴィランへ駆けていった。もちろん俺もその中の一人だ。
しかし背後の確認を…と後ろを一旦振り返ってみると、いつまで経っても立ち往生して動けていない子がいた。あの見覚えある地味めの顔。出久ちゃんだ…
「出久ちゃんってばどうしちゃったんスかね…? もしかして、急にお腹でも痛くなったのかな…」
折角手に入れた雄英高校を受験するというチャンスを無下にする訳にはいかない。彼に向かってしばし手のひらを合わせた後に、俺が思い切り指と指をこすり合わせぱっちんと音を鳴らすと、
「…おお、今日は随分とご登場が早いッスね!流石は俺の嫁!」
そこには磨き上げられたディープブルーの車体が目眩を引き起こさんばかりの輝きを放つ、ギンギラでコッテコテの改造バイクが一瞬の内に現れていた。
この心を揺さぶる派手派手なデザイン、たまんねぇッスよ!ちなみにあくまでもコレはバイクの形状をした乗り物なので法律には触れてない、多分。
頬ずりしたくなる衝動を押さえ早速シートの上にへと跨がり持ち手の部分を強く握る。エンジン音を鳴り響かせながらバイクは直進していく。…えっ、真面目ちゃんだけなんか俺に追い付いてきてるんスけど?!
