第3章 謎解きって無駄話みたいだと思う。
コイバナ嫌いな割に穿ったことを言うなぁ。でも。
「うーん。そういう切なさは感じないんだなぁ…」
「何がだよ」
「ああ!」
ポンと手を打つ私をチルチャックは勘弁してくれという目で見る。
「好きで構って欲しいからって、相手が異性である必要はないか!」
「…いよいよ何言い出してんの?大丈夫か、お前」
「何だかさ、負け惜しみっていうか、焦れ焦れしてるっていうか、そういう感じがするの、この罠」
「はぁ?」
「派手なだけで詰めが甘いし」
「まあ火を噴きゃしたけど、次がなかったな」
「他の像を動かしたらまた何かあるんだろうけど、畳みかけて潰しに来るような明確な殺意はないんだよね」
「直撃すりゃ焦げて死ぬ。明確な殺意だろ、十分」
「それくらい勿論かわせるだろって挑発かも知れないじゃん」
「何で見ず知らずのヤツを挑発しなきゃねえんだよ。小部屋に入れたくなけりゃ撃退すりゃいいだけの話だろ?馬鹿か?この罠を仕掛けたヤツは自意識過剰の馬鹿なのか?」
「見ず知らずじゃない相手を想定して作ったものなら?」
「その相手が狂乱の魔術師ってのか?狂乱の魔術師相手じゃこの罠はちょっとお粗末だと思うな」
「本当の挑発は像の謎解きだよ。火を噴く罠とかじゃなく」
「謎解きが挑発…」
「そう!凄いなって思いたいし、思われたい!みたいな…」
「…何言ってんの、お前…」
「チルチャックにはいないの、そういう人?」
「そんな面倒な相手はいない」
「なりたいけどなれないとか、なりたくないけど惹かれるとか」
「引かれる?」
「…その性格だからそっちの引かれるはいっぱいありそうだよね、チルチャック…」
「ほっとけよ」
「何ていうのかな、まるきり片思いの相手に振り向いて欲しいけど、認めて貰うんじゃなければ意味がない、みたいなさ。あっそ、凄いね、じゃなくて、おお、凄いじゃないか!って言わせたいっていうかさ」
「説明されればされる程分からなくなるな。始めの話の方が分かり易い。凄いって思いたいし思われたいっての」
ふん。チルチャックにしたらその方が分かり易いんでしょうよ。私なら断然後者が分かり易いけどさ。
ムッとして口を噤んだら、チルチャックが溜め息混じりに私のおでこを指先で弾いた。
「膨れんな。悪かったって」
「…ぎ…」
「あ?ぎ?」
ぎぃやぁぁあ!!!!