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子供魔術師 ーダンジョン飯ー

第2章 損する探索はなるべくしたくない。何故なら彼は…



私は複雑な思いで頷いた。
小部屋に辿り着くにもその扉を開けるにもチルチャックの力が必要だ。
だから私は彼が余念なく仕事出来るようにしっかり護衛しなきゃいけないというのに、しっかりどころかこんなことを言われている始末。

情けない。

こんな私より断トツあてになるエルフのマルシルは、今他の皆と広間の入り口のところでゴーレムと戦っている筈。
この広間は足を踏み入れようとすれば三体のゴーレムが現れる。何時もなら真っ向から戦わずに逃げるのがお決まりだ。行動速度が遅いゴーレムはご多分に漏れず鈍足で、罠を避けながらでも何とか逃げ切って広間を抜けることが出来る。
でも今回はただ広間を抜ければいいという訳じゃない。小部屋に辿り着いて中を探るのが目的なのだ。
ゴーレムを足止めする必要がある。

攻守に手強いゴーレムは核が泣き所で、それさえ抜いてしまえば動きが止まる。そう聞けば簡単に思えるけれど、ところがどっこいしょでこれが難しい。
ゴーレムは一体一体核の場所が違う。何処に核があるか、一見してもわからない。
中には体の透き通ったアイスゴーレムみたいな親切なヤツもいるけれど、それだって巨体に埋まる核を見定めるのは簡単じゃない。何せ黙って立っててくれる訳じゃなく襲って来るんだから。
兎に角ゴーレムを倒すには、くっそ重い攻撃を避けながら反撃しつつ、地道ーにしつこーく核を探り続けるしかないのだ。そんな状態でパーティーごと罠だらけの広間に足を踏み入れたら、全滅の憂き目を見る。

つまり罠もゴーレムも、途中の小部屋に気付くような余裕を与えない為にあるのだ。
成る程ね。上手くしたもんだよ。

ああ。

油断すると漏れそうになる溜め息をぐっと噛み殺す。

ファリンが流感に罹ってさえいなければ、とか思ってる…思ってるよね。

壁を探って小部屋を開ける仕掛けを調べているチルチャックの小さな背中をきゅんとした思いで見詰めていたら、自然と肩が落ちて来た。
しょんぼりってヤツ。
ごめん。あんまり強くなくて。

ほんわかした雰囲気のファリンはマルシル同様凄腕の魔術師。二人は同じ魔術学校で学んでいたと聞いた。
私は成り立ちからしてそんな二人と全然違う。
私の祖母は呪術師だ。極北の土着の呪術を使って病気を治し、失せ物を探し、天候を先見する呪い師。その影響で私は見様見真似の土着の呪いを使い出した。

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