第4章 外伝 優しい理由
実弥side
自分の過去を話したのは何時ぶりだったか。それも自分の家族の話を話す気なんてなかった。
ただ単純に似ていただけ。
此奴にとっては所詮お節介で終わるだろうが、笑った顔を見て思い出された感情。
俺は俺の中で閉じ込めていたものが、今日一気に爆発したような感覚だった。
これを言ったら此奴はどう思うだろう。背中越しに自分のことを話していくと、いきなり振り返って腕を広げてきた。
実弥「…お前何やってんだァ?」
『“知ってますか?辛いときに誰かに抱きしめてもらうと心が晴れるんですよ”』
実弥「…!!」
『“私は兄が鬼にされ、襲われそうになったところを師範に助けてもらいました。
初めは辛くて耐えられなくて死にたいとも思ったけど、師範にこれを教えてもらってから少し楽になったんです。”』
実弥「……」
そんなことは知ってる。俺がよく弟や妹にしてやってたから。だが自分からしたことは一度もなかった。