第5章 これから…
しばらく沈黙が続いた。
「…バ…バカじゃねぇの
こっちは動けねぇんだから、いつでも傍にいられるだろ…」
照れ臭さから、つい悪態を吐く。
「あらあら、照れちゃって…」
「照れてねぇ~よ!」
おふくろが囃し立てる。
動ければ今すぐこの場から逃げ出したいところだ。
ふと、薫を見ると顔を真っ赤にしたまま固まっていた。
自分から告白しといて何やってんだか…。
まぁ、こっちも恥ずかしさMAXだから、まともに顔も見れないけど…。
「じゃあ、薫ちゃん後はお願いね」
この状況でおふくろはしれっと帰ろうとした。
「ちょっと待って!
帰るなら薫も連れてけ!」
「まだ帰らないわよ
ちょっと退院の手続きやら何やらを聞いてくるの」
そう言ってさっさと病室を出ていった。
…長い沈黙が続く。
俺はわざと薫に背中を向けて横になった。
どうすんだよ、この空気…。
「なぁ…薫…
俺が初めてお前と喧嘩した時の事、覚えているか?」
「…」
薫は何も答えなかった。
「まだ俺は中学生だったな…
野球部のしごきでちょっと強くなった気がして、いい気になって…
まるっきりガキだったよな
そんな俺を薫は叱ってくれたのに、俺はそれを跳ね退けちまった
あの頃は気にもしてなかったけど、幸司と出会って過ちに気が付いた
正直、面と向かってなんて恥ずかしいから言えなかったけど…」
俺は薫に向き合った。
「あん時はごめん
今までありがとう」
やっと素直に謝れた。
薫の瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。