第4章 事件
岡田刑事が来たのは二時間くらいしてからだ。
「遅くなってすまんな」
仕事の途中だった和田は帰ったが、薫は休みだったので残っていた。
「遅ぇぞ、オッサン」
「本当に君は口が悪いねぇ
それより、記憶が戻ったって本当なのかな?」
岡田刑事は改まって俺に向き直った。
「はい、やっとですね」
「じゃあ、何があったか話してくれないか」
それは、同僚のバイクを探しに港へ行った時だ。
何か怪しい動きをしている連中がいた。
俺はバイク窃盗グループだと思い、隠れて様子を見ていた。
だがしかし、連中はバイクじゃなくトランクを積み替えていた。
バイクじゃないが怪しい事には変わりなかったので様子を見続けると…。
遠目だから会話とかは分からなかったが、何か言い争いをしている様に見えた。
トランクを全部積み替えた連中から平田だけ歩いてこっちへ向かって来た。
俺は、ばれたのかと身を隠すが直後、エンジンの唸り声とタイヤの悲鳴で、車が急発進した事が分かった。
顔を出すと平田が走って逃げていた。
それでも明らかに轢かれてしまうと思った時には、勝手に身体が動いていた。
俺は物陰から飛び出し、平田を突き飛ばした。
「その後は、さすがに記憶がないけどね」
これが俺の記憶の全部だ。