第4章 事件
「おはようさん
記憶はどうかな?」
岡田刑事の朝の挨拶だ。
「早いですね
出署前ですか?」
時間はまだ8時前だ。
こっちは病院の規則正しい生活だから、この時間でも問題はない。
「実は君に見てもらいたくてね」
岡田刑事はそう言いながらタブレットを出して画像を俺に見せた。
「これは…」
「君が見た外人じゃないか?」
「確かに似てますね
遠めだったので、間違いないとは言えないですけど…」
「そうか、それで十分だ」
岡田刑事は確信したように言い切った。
「これでやっと少しは捜査が進む
少しでも記憶が戻ったら外の警官に言ってくれ
すぐに聞きに来る」
そう言い残すと足早に出て行った。
さすが警察ってところか…。
あれだけ手掛かりがないと言いながら、しっかり容疑者の見当を付けるとは。
これなら俺の記憶の出番もないかもな。
「あぁ~、今日は検査もないし二度寝するか…」
俺はそのまま昼まで寝ていた。
「よう、生きてるか?」
こんな挨拶する奴は、和田しかいない。
「幸司こそ、ちゃんと仕事してるのか?」
「当たり前だ
俺は次期社長だぞ」
「ふん、お前が社長になったら親父さんの会社も無くなるな」
「てぇめぇ、喧嘩売ってんのか!?」
「治ったらたっぷり遊んでやるよ」
俺達は拳を合わせた。