第4章 事件
薫もほぼ毎日の様に顔を出してくれる。
「薫も暇だな」
笑いながら厭味を言う。
「うるせーなぁ、暇じゃねぇよ
おばさんが少しでも楽出来る様に子守に来てるんだよ」
薫も負けじと厭味を返す。
「はいはい、病室なんだから騒がないの
じゃあ、薫ちゃん後お願いね」
おふくろは今日も鮮やかな手際で着替えを片すと風の様に帰って行った。
正直言うと、感謝する反面困っている。
夕方におふくろが来るのは、着替えだけじゃなく食事の手伝いもしてくれる。
利き手を怪我してるので食事もなかなかに不便だ。
それをおふくろは薫に任せて帰ってしまう。
食事は病室まで看護婦さんが運んでくれる。
誰もいないと看護婦さんがそのまま手伝ってくれるが、誰かいると任せて行ってしまうのだ。
「はい、ぼくちゃんあ~んして♪」
「一口大にしてくれれば自分で食えるわ!」
「ぼくちゃん我が儘言っちゃダメよぉ」
「…覚えてろよ
治ったらただじゃすまねぇぞ」
薫は完全にからかいに来ているだけだ。
こんな薫だから変に深刻にもならなくて済む。
本当に感謝しきれないのは間違いないが…。
「残さず食べれたね
いい子ねぇ~」
「…」
やっぱり帰ってくれ。