第3章 回復
「悪いな」
「今更何言ってやがる
治ったらたっぷり返してもらうからな」
和田は笑いながら答える。
「なぁ…このまま記憶が戻らなかったらどうなんだろうな?」
俺はふと呟いた。
「お前に借りてる金は返さなくていいって事だ
思い出されちゃ困る事もいっぱいあるしな、俺には好都合だぜ」
和田は冗談で返す。
「…正直、事件の事を思い出すのが怖いんだよ
だから記憶も戻らないのかも…」
俺の本音だった。
「…ただの事故じゃないから分からなくもないが、お前らしくないな
相手がどんなにヤバくても自分の正義を曲げない奴が…」
記憶が少しづつ戻っているとは言え、やっぱり不安は隠せない。
今までの俺は、和田にこんな弱音は吐かなかったのだろう。
「…今の俺はそんなに強くねぇよ」
「はははっ、お前は元々強くねぇよ
ただ頑固と言うか、相手が諦めるまで止めない厄介な奴ってだけだ」
和田が笑い飛ばす。
「ちぇっ…お前に相談なんかするんじゃなかったぜ…」
「だったら薫に聞いてもらえ」
「余計、相談にならねぇよ」
「ちげぇねぇ」
俺達は笑い合った。
外の空気を吸いながら和田と話が出来て、少しは俺の中に力が湧いてきた気がした。