第2章 記憶
看護婦さんが点滴を片付けてから岡田刑事と話した。
「何かありました?」
「さっきは薫くんが居たからね…
平田は容疑者と言うことで、身柄を警察病院に移すことになったよ
今のところ容疑は、盗難車の件と君の轢き逃げの件だが…
君は目撃者及び被害者となる
一応警護の為に警官を手配しておいた」
こんな状況でも不思議と驚きは無かった。
「警護ですか?
出来れば綺麗な婦警さんが良いですね」
「あははっ、そうもいかんだろう
しかし、君は何でそんなに落ち着いていられるんだ?」
岡田刑事が不思議そうに聞いてきた。
「記憶がないからじゃないですか?
それにどうせ今は“まな板の上の鯉”だし…」
「まだ身体も記憶も時間掛かりそうだな」
「記憶は少しづつ戻ってますよ
やっと両親と和田の事を思い出しました」
岡田刑事はいつものように頭を掻きながら、
「なら事件の事も頼むよ、はははっ」
と、笑いながら病室を出て行った。
俺も早く思い出したい。
少し思い出したから余計に、記憶が無い事がこんなに不安なものかと思い知らされる。
そんな時、俺を更に不安にさせる事が起こる。