第6章 明日香の苦悩
まぁ俺が心配したところで、手助け出来る事はない。
(ただ見守るだけでしかないか…)
そんな事を思っていたら、目の前に桜の花びらが舞った。
「こ、これは姥桜か?」
「明日香!どう言うことよ!」
現れたのは響子ではなく、幼なじみの麗華だった。
「…麗華?どうしたんですかぁ?」
明日香はのほほんとしているが、麗華は今にもあの大剣を振りかざしそうな雰囲気だ。
「どうしたもこうしたもあるかぁ!」
麗華はまさに烈火の如く怒っている。
その怒りは俺の耳を疑う理由だった。
「なんで今回の昇進試験を受けないのよっ!」
「それはぁ…」
明日香は言葉を詰まらせた。
「一緒に昇進しようって、あんなに楽しみにしてたじゃない!」
「本当なのか?明日香?」
俺の問いに明日香はこくんと頷いた。
「なんでよ!明日香!」
麗華は明日香の肩を掴んで揺すった。
「まぁまぁ、落ち着けよ
明日香にも何か訳があるんだろう」
麗華を引き離し落ち着かせる。
明日香は俯いたまま何も言わなかった。
しばらく険悪な空気が俺達を支配していた。
そして明日香が重い口を開いた。
「…だって昇進したらぁ…この桜からぁ…離れちゃいますぅ…
そしたらぁ…そしたらぁ…」
ついに明日香は泣き出してしまった。
麗華も怒るに怒れず、ばつが悪そうに頭を掻いていた。