第5章 精王と紅(くれない)祖母さん
その大広間の一番奥に誰か座っている。
あれが祖母さんなんだろう。
響子が静々と進んでいく。
明日香が後に続き、俺は明日香の後を付いていく。
近寄ると、さすがに祖母さんらしく見えるが、とても1500歳を超えてるとは思えない。
淡いグレーの着物を纏い、まるで銀細工の様な白髪、瞳はやはり漆黒だ。
人間なら60~70歳程度に見える。
座っているが背筋はピンとしていて、凜とした佇まいは神々しささえある。
「お祖母さま、お連れ致しました」
響子は一礼して、横に避けるように座った。
「紅お祖母さま、お久しぶりですぅ」
明日香も一礼して座る。
「はじめまして、島津一八と言います」
俺も挨拶して明日香の脇に座った。
(なんか空気が重い…)
「よくお出で下さいました
畏まらなくて良いのですよ」
祖母さんは俺の心を読んだのか?俺に頭を下げた。
その声は、穏やかで澄んだ優しい声をしていた。
「明日香も元気そうで何より…」
明日香を見て、祖母さんの顔が綻ぶ。
明日香も嬉しそうに微笑んでいる。
と、ここまでは非常に和やかな良いムードだった。
しかし、そのムードをぶち壊す奴が現れた。
「は~い♪明日香ちゃん、迎えに来たよ」
この底抜けに明るいハイテンションな声の主、コスモスの精・ラウルだ。